臨床心理士。東京家政大学助教を経て、公立校のスクールカウンセラーとして、現在は都内及び埼玉県の小中高校で相談業務やコンサルテーションに従事。今年度が初(※)となるカウンセラーの国家資格「公認心理師」試験を目指して勉強中。
(※)インタビュー時点の情報です
カウンセラーになったきっかけ
–まず、心理学に興味を持ったきっかけを教えて頂けますか?
中学生の頃、朝礼で学校の先生が一人ずつ話をしてくれるイベントのようなものがありました。そこで、ある先生がご自身のお子さんが描いた似顔絵を見せてくれたんです。
その絵を心理学的に見ると、仕事であんまり一緒に過ごせていないから、子どもに寂しい思いをさせていることが読み取れたということを先生がお話してくださって、そこから心理学に興味を持ちました。
–それが今就いていらっしゃるスクールカウンセラーのお仕事につながっているんですね。
そうですね。心理学に興味を持ったことで、勉強したいという気持ちが出てきました。
それで、高校生の時に、大学では心理学を学ぼうと思ったんです。せっかく心理学を学ぶのであれば、仕事も心理学を活かせるようなものがいいなと思って、進路を決める時に心理系の仕事についていろいろ調べました。
そこで、目についたのがスクールカウンセラーです。私の家は、家族がみんな教員で、昔から「学校」という存在がとても身近でした。それに私自身も教員免許を持っていたこともあって、スクールカウンセラーの仕事をしてみたいなと思いました。
スクールカウンセラーのお仕事について
–見事、夢を実現されたのですね。それでは、現在の職場について具体的に教えて頂けますか?
はい。東京と埼玉にある公立の小学校、中学校、高校に行っています。高校は一校、小学校、中学校は二校ずつ行っています。学校の数が多いので、見なくてはいけない児童・生徒も多くて、名前を覚えるだけでも一苦労です。
その日に行く学校を間違えないように、学校ごとに分けて、カレンダーに色つきのシールを貼ることで対策しています。
カウンセラーの1日のスケジュール
–それでは、勤務時の一日のスケジュールを教えてください。
学校によってまちまちなのですが、朝は大体8時過ぎくらいには学校に着くようにしています。お昼休みや放課後は主に子どもたちの相談に乗っています。それ以外では、保護者の方と面談をしたりしていますね。
予約がない時は、子どもたちと遊んだりもしています。遊ぶことで、子どもの変化に気づくこともあるので、そういった場合は、子ども本人に声をかけたり、担任の先生に話して、連携をとったりもしています。
あとは教室に行って普段の子どもたちの様子がどのような感じか観察しに行くこともありますね。基本的に放課後は学校の先生方との会議があって、そこでお互いの話を聞いたり、子どもたちに関する相談に乗ったりしています。
–残業はありますか?
時期にもよりますが、そんなにはないですね。ただ、6月は相談が多くなるので、忙しいです。ゴールデンウィーク明けに頑張れなくなってしまう子もいますし、夏休みまでにはまだ時間があるので、そういった中途半端な時期には相談が多くなります。
年末も相談が多いですね。逆に、4月はそれほど相談はないので、時間にゆとりがあります。
–時期によって波があるんですね。スクールカウンセラーをしていて大変だったことは何ですか?
同じ中学校でも学校がある地域や雰囲気によって、子どもの様子はがらりと変わります。学校の先生と連携しながら、それに臨機応変に対応しなくてはいけないのが大変ですね。
カウンセラーは子どもや保護者、一人ひとりの悩みに向き合うのに対し、学校の先生は集団の中で子どもたちがどうやって過ごしていくかについて考えています。
個人と集団、観点が違うところからどうやって折り合いをつけていくかが難しいですね。先生の気持ちに寄り添いながら、意見を伝えるようにしています。
–では、スクールカウンセラーのやりがいを感じるのはどんな時ですか?また、何か印象に残っている出来ごとなどあればお教え下さい。
この仕事は、自分の関わりがすぐに目に見えた効果として現れないことが多々あります。それでも、試行錯誤しながら対応を続けていると良い変化が生まれることもあります。
たとえば、情緒不安定で授業を妨害してしまったり、教室に入ることが難しかったりした子どもが、落ち着きを取り戻して教室に戻れた時などは嬉しくなりますし、この仕事のやりがいを感じます。
–相談内容としては、どのようなものが多いのでしょうか?
子どもの場合は、友人関係の相談が多いですね。あとは中学受験の相談を受けることも結構あります。
保護者からは、不登校や発達的な問題についての相談が多いです。
高校生は、心理学を勉強したい、カウンセラーになりたい、という子たちもよく相談に来てくれます。
–カウンセラーライフには心理学を勉強したい方や、カウンセラーになりたいという方が訪れてくれています。カウンセラーに向いている人はどんな人だと思いますか?
相談に来る方の中には本当にいろんな人がいるので、たくさんの人とコミュニケーションを取りたいと思っている人が向いていると思います。
人と関わるのが好きで、なおかつ人のお手伝いをしてあげるのが好きなら、とても良いと思います。
あとは感受性が高い人ですかね。日頃から映画を観たり、読書をしたりするのが好きな人とか。
–細田さんご自身が、日々カウンセリングをする中で気をつけていることは何ですか?
相手が子どもでも大人でも本人の気持ちを大事にして接することですね。
皆さん、何かしらの悩みを抱えて相談に来ているので、本人がイヤだなと思っていることを受け止め、共感することが大切だと思っています。
–仕事をしていて壁にぶつかった時はどのように対処していますか?
相談を受けた自分自身が悩むこともあって、そういう時は出来ごとを振り返って考えてみたりしています。
ただ、たくさん考えたからといって答えが出るわけではないので、しょうがないと割り切っています。
と言っても、あきらめるのではなく、横に置いておく感じです。別の仕事をしていく中で答えが見つかることもあるので。答えが見つかったら、その後の仕事に活かしています。
カウンセリングの勉強について
–大学時代に勉強していたことで、今の仕事に役立っていると思うものはありますか?また、もし不満などありましたら教えてください。
大学ではストレスの研究をしていたので、子どもが抱えているストレスに向き合う時にはとても役に立っています。また、子どもたちにストレスの対処技法なども教えられるので、良かったなと思っています。
あわせて読みたい子供の絵と心理学
不満な点は、大学を卒業するだけでは、心理系の仕事に就こうと思ってもかなり限られてしまうことです。就職に直結するような資格もあまり取れないですしね。大学時代、私の周りにもそういう理由で心理職をあきらめてしまう人が結構いました。
–細田さんにとっての恩師はいらっしゃいますか?
お二人います。一人は大学時代に教わっていた相馬誠一先生です。大学三年の時に、「新しい先生が来年度からいらっしゃるから、大学院に進むなら、その先生の研究室に入ったらどう?」などと勧めてくれたのが先生です。
もう一人は今話をした、新しい先生で三浦正江先生です。卒業論文や修士論文の時に指導してくださった先生で、大変お世話になりました。
今後取得予定の資格
–現在、何か資格の勉強などはされていますか?
今は、公認心理師の勉強をしています。ジャンルが幅広いので大変ですね。
昨年度までは公認心理師の勉強に備えて心理学検定(※)を受けていました。また、産業カウンセラーの資格も持っています。
日本心理学諸学会連合が行っている検定試験。受験資格がないため、独学でも受験可能。特1級、1級、2級に分かれている。合格することで、心理学の知識を持っていることの証明になる。また。就職、大学院進学、心理関係の上位資格の取得などに利用できるようになりつつある。
–最後に、現在心理系資格の勉強している人、またはこれから勉強したいと思っている人へアドバイスをお願いします。
資格の勉強というと、テキストを読んだり、それをノートにまとめたりなど座学の勉強が多いと思います。
でも心理職は人との関わりがメインになる仕事です。ですので、普段から人と直に接することを大切にしてほしいなと思います。