子ども 絵 心理

絵を描く子どもの心理

子ども 絵 心理

子どもにとって、絵を描くことは遊びのうちの1つです。絵には、ふだんは言葉で言い表せないような心の動きが反映されます。言葉でのやりとりが難しい子どもでも絵は描けるので、子どもを対象としたセラピーの際に、絵を描かせる方法はよく用いられています。

子どもの絵と心理学

子どもの描く絵には、大人には真似できない独特のタッチや様々な表現の仕方があり、ときには芸術的と思わせることも少なくありません。

一方、絵には深い心理状態が反映されることもあり、虐待や災害、戦争などで傷ついている子どもの絵には、深い悲しみや恐怖などの感情が表されることも知られています。

絵を描くことは、家庭での遊びのほか、保育や教育活動の一貫としても行われます。

心理学においても、子どもの絵は昔から大きなテーマの1つです。臨床現場では心理分析(アセスメント)の手法として用いられることもあれば、アートセラピーなどのセラピーに使われることもあります。

 

子どもの絵の発達

一口に子どもといっても、年齢や発達段階はさまざまです。子どもの発達段階によって絵には変化が表れます。子どもの絵に関する発達は「描画発達」と呼ばれ、そこには一定のプロセスがあることがわかってきています。

子どもの絵の発達段階については、アメリカの美術教育学者ローウェンフェルドや、心理学者サイリル・バードなどによるさまざまな研究があります。その発達段階の分け方については諸説ありますが、概ね以下のようなステップを踏んで展開します。なお、年齢はあくまで目安であり、個人差が大きいので注意が必要です。

1.なぐり描き期(1歳半から2歳半ごろ)

なぐり書き期
出典:chiik.jp

絵筆を握り、紙にこすりつけると色が残る。このことだけでも、初めて画材に触れた幼児にとっては新鮮な出来事です。ペン先にちょっと触れてみて、指にインクがつくことに気付く。トントンと紙をつつくと、点状にインクが残ることに気付く。人生で最初のお絵かきと言っても良いでしょう。

最初は手首だけを使って描いていたのが、身体的な成長とともに、ひじの関節も使って描けるようになります。たとえば、クレヨンをスーッと紙の上で滑らせて、なめらかな線を引けるようになります。やがては波型やらせん型も描くようになります。

この時期は、具体的な「なにか」を描くのではなく、描く行為そのものを楽しんでいる段階です。
ただし、描いたあとで、そこに意味をつけることはあります。たとえば、長い線を引いて、後からそれを「道」に見立てることもあるでしょう。自分で意味をつけるだけでなく、そばにいる親や保育者などの大人がいっしょに描きながら、自然な会話のなかで意味を与えることもあります。

「錯画期」「ぬりたくり期」とも呼ばれます。

2.象徴期(2歳半から5歳ごろ)

やがて子どもは、あらかじめ意味をもった「なにか」を描くようになります。

線や円、うずまきなど、描ける図形は限られていますが、ときに言葉での説明も伴って、そばにいる大人と意味を共有しながら絵を描きます。たとえば、絵を描きながら「でんしゃ」「おかあさん」「パパ」などと話しながら描きます。
この段階でも、絵として1つの完成形を目指すというよりは、描くまでのプロセスを楽しんでいます。線を引きながら、心の中で「でんしゃ」を動かしているかもしれません。

第三者が絵を見ると意味がわからなくても、そばにいる大人とは意味を共有しているということがしばしばあります。この時期の子どもにとって、大人は絵を見せる対象というより、ともに絵を描き楽しむ存在なのです

「命名期」や「カタログ期」「図式前期」などとも呼ばれます。

子供の絵 命名期 カタログ期
出典:子育て応援サイト MARCH (マーチ)

3.図式期(5歳から8歳ごろ)

さらに成長すると、子どもは1つの絵として物事を組み合わせて描くようになります。たとえば、絵の中に地面を表す線を入れたり、空を位置づけたりします。そうすると、それぞれバラバラの図形ではなく、絵全体としての秩序が生まれてきます

この頃は、物を見たままに描くのではなく、「展開図」「多視点画」「レントゲン画」(透明画)などと呼ばれる絵を描くことが多いです。「展開図」や「多視点画」というのは、たとえば中心に「机」として大きな四角を描き、その四方に90度ずつ回転させた正面向きの人を描くような絵のことを言います。「レントゲン画」というのは、家の形を描いた内側に、中にいる人や家具を描くような絵のことを言います。このように、目で見えているものをそのまま描くのではなく、自分の知識や経験を活かして、知り得る限りの情報を表現しようとすることを「知的リアリズム」と言います。

この頃から次第に、大人や周囲の友達を、絵を見せる対象として意識するようになると考えられています。

4.写実期(8歳以降)

8歳から青年期以降になると、「知的リアリズム」から「視覚的リアリズム」へと移り変わります。「視覚的リアリズム」は対象の見え方に基づいて忠実に描くことを言います。つまり、自分の絵と実際の物事の見え方との違いに気づいたり、技法を身につけたりしながら、見えているものをそのまま描くようになるのです。この写実期をさらに「黎明期」「写実期」「完成期」という複数の段階に分ける見解もあります。

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子どもの絵とどう関わるか

子どもの絵の表現の発達は、心身の発達と深い関係があると考えられ、特に幼児の段階では文化や環境に関わらず共通の道筋をたどることがわかっています。

ただし、その発達が進むペースや方向は、子どもの個性や環境や文化によってさまざまです。子どものためにも大人は、絵が「上手か下手か」、または絵を描くのが「早いか遅いか」を気にするのではなく、子ども自身が描きたいものを楽しんで描けているかどうかを何より大切にしなければなりません。

子どもにとって、基本的に絵は遊びの一環として描かれるものです。上記の発達段階は、絵を評価するためではなく、むしろ子どもが絵を描く動機の多様さへの理解を深め、適切に関わるためにあることを理解しておきましょう。

 

セラピーやアセスメントとしての子どもの絵

自分を表現することが癒やしの効果を持つと考えられることから、それがセラピーにも用いられるようになりました。これを、アートセラピー(芸術療法)と言います。アートセラピーには箱庭療法、コラージュ法、詩歌、演劇、ダンス、音楽などさまざまな手法があり、絵を描くことはそのうちの1つです。絵画法描画法などとも呼ばれています。

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アートセラピーの利点はいくつかあります。例えば、言語化できない心の深層を表現できること、作品を通して自己受容ができること、セラピストと子どもとの間の緊張を和らげたり、関係を安定化させることなどが挙げられます。
子どもの場合、絵を描くことは遊びでもあり、プレイセラピー(遊戯療法)に位置づけられることもあります。

臨床心理学や精神医学の分野では、子どもに絵を描かせて、その絵の特徴から臨床的なアセスメントや診断をするということも行われます。これは、描画分析と呼ばれています。

子どもが口にしたくない出来事や、言葉にできない感情は絵に表れやすく、対象が幼児でも行いやすいので、描画分析は有効なものです。
手法としては、大きく分けると、「自由画法」と「課題画法」があります。

「自由画法」は、その言葉通り自由に思いつくものを描画してもらう方法のことを言います。「課題画法」には、実がなる1本の木の絵を描いてもらうバウムテストや、家(House)と木(Tree)と人(Person)を1枚の絵として統合的に(Synthetic)描いてもらうS-HTP法、自画像、家族画などの形式で人物の絵を描いてもらう人物画法など、さまざまなものがあります。

ただし、絵の解釈はむずかしく、評価する側の主観が入りやすいという問題もあります。子どもの絵から心理状態を簡単に分析できるかのような情報も多いですが、深い理解には専門的知識が必要とされているため、必ずしも高い信頼性が確保されているとは言えません。

自由に絵を描く喜びを育てよう

幼児の頃は楽しんで絵を描いていた子どもも、成長とともに絵を描くのが苦手になっていくことがしばしばあります。そこには、周囲との比較や大人からの評価が影響していると考えられています。

絵の発達段階からもわかるように、子どもにとって絵を描くことの目的はさまざまです。
子どもがどんな思いで絵を描いているかを親(養育者)がくみ取ることで、子どもとの接し方や、描いた絵の見方も変わることでしょう。それはセラピーやアセスメントとして絵を描かせるときにも大切な視点です。

絵は自由なものであり、それゆえ自分の内面が表現できるものでもあります。自由に絵を描くことの喜びは、いつまでも子どもに持ち続けてもらいたいものです。