カウンセラーと自己理解 臨床心理士インタビュー

臨床心理士 大平さん プロフィール

臨床心理士 医療カウンセラー

1989年生まれ。臨床心理士。都内複数の心療内科でカウンセラーを務め、現在は育児休業中。心理カウンセリングの他にリワークプログラムを開発する企業での経験をもつ。

カウンセラーを目指したきっかけ
–まず最初に、カウンセラーを目指したきっかけを、教えていただけますか?

実は、実家が「里親」だったんです。

中学生の頃から、不法就労者(外国人)の子どもやいろいろな事情で親と暮らせない子どもを家で面倒をみていました。児童相談所のケースワーカーやカウンセラーの方が、月1でみえて面談をする、という光景が日常的という環境でした。

里親制度 …実親の代わりに子ども(里子)を受け入れ、養育する制度。子どもの健全な育成のため、里親になるには、研修や調査を経て「里親認定」を受けることが必要になる。研修などの頻度や受け入れ条件は、自治体によって異なる。
–「里親になる」ということは、小さいお子さんとはいえ、同じ屋根の下で一緒に暮らすことになるわけですね。反対はされなかったのですか?

家族会議がありました。両親から「里親をやろうと思う」と言われて…どういうものか説明を受け、そんなに反対する理由もなかったので。

受け入れた子どもたちはやはり最初は心が不安定なのですが、カウンセラーと接したり、生活に慣れてくると、次第に安定していきました。

–そのような経験から、自然と心理の方面に進んでいかれたのですね

はい。

子どもが変化していく様子を何度も目にしてきましたし、カウンセラーの役割を間近で見ていたことからも、大きな影響を受けていました。

自分の心理とカウンセラー、ソーシャルワーカー

高校の頃には、臨床心理士という資格や、臨床心理士の資格があると、どのような仕事につけるかも調べていましたので、その頃には、心理の道に進むことを決めていたように思います。

参考臨床心理士とは?

カウンセリングの勉強について
–大学院でのカウンセリングの勉強について、お聞かせください

大学院では、現場での実習が特に勉強になりました。大学院1年時には、教育相談センターの適応指導教室、2年時ではクリニックで心理検査や医師のサポートをしていました。

–実習では、実際にクライエントを診たりするのですか?

実習生によるカウンセリングは、実習であることをお伝えしたうえで、希望する患者さんに対して無料のサポートカウンセリングを提供する、という流れになっていました。SV(※)がいて、そのカウンセリングについて問題点などをレビューしてもらいます。

SV… SV(Supervision)もしくはスーパーバイザー。この場合、カウンセリングの質の向上のため、理論や技法に精通した経験の豊富な人(主に大学の教員が担当)が訓練・指導を施す。
「臨床心理士」が役に立った点
–心理の専門職の場合、臨床心理士の資格が必須であることが多いと思いますが、特に、資格が役に立ったと感じる時はありますか?

そうですね、やはりクリニックでは「臨床心理士」を必須としているところが多いですが、有資格者を確保できなかったときは、(臨床心理士)取得予定の方や院生を採用するクリニックもありました。就職や転職を意識すると、臨床心理士の資格は重要かなと思います。私は、心療内科クリニックを3院ほど経験しました。

その中で、クライエントから「臨床心理士の資格は持っているのか」「大学はどこを出たのか」等を聞かれることも何度かありました。

–そのような質問をされるということは、臨床心理士かどうかを気にするクライエントが一定数いるということでしょうか?

そういった話も聞きます。

臨床心理士から見ても、カウンセラーの求人で、必須資格に「臨床心理士」の記載がない求人を見かけると、「このクリニック、大丈夫かな」と感じる人はいるようです。

心理カウンセラーの一日のスケジュール
–大平さんの、一日のスケジュールをお聞かせください

直近で勤めていたクリニックでは、9時から予約を受けて午前中は3件のカウンセリングです。12時からはインテーク(※)があって、14時に休憩をいただきます。

午後は、日によって心理検査かカウンセリングというスケジュールでした。

8:00 始業
9:00 カウンセリング1人目
10:00 カウンセリング2人目
11:00 カウンセリング3人目
12:00 インテーク(新患)
14:00 休憩
15:00 心理検査もしくはカウンセリング
(※)予約状況による
18:00 終業
インテーク … 初回面接、もしくはインテーク面接。クライエント(新患)からの相談依頼を受けてから行われる最初の面接のこと。氏名や生年月日、現病歴、家族構成などの事務的な情報(後のカウンセリングに必要になる場合が多い)の収集を通して、カウンセラーと治療の方針を決めていく事もある。
–かなりカウンセリングが詰まっているのですね

完全予約制のクリニックなのですが、予約状況によって空きが出る場合もありましたが、ほとんど埋まっていました。

その前に勤めていた院ではもっと過密で…1枠25分と決まっていました。

–25分ですと、短く感じるクライエントもいるのではないでしょうか?

その場合は、2枠を予約してもらうというシステムでした。

医療機関のカウンセリングは、現状、自費のケースが多いですし、カウンセリングの時間や料金も様々です。地域性もありますが、やはり院長の方針で決まるようです。

多いクライエントのタイプ
–受け持たれたクライエントに、どのようなタイプが多かった等ありますか?

インテークや心理検査では、とくに偏りがなかったように思います。高齢で認知症の方であったり、50代男性で役職持ちの方であったり、様々でした。悩みを抱えた大学生が、ひとりで相談に来るケースもありました。

実際、私がカウンセリングを受け持った方で多かったのは20〜30代の女性でしょうか。夫婦間の問題を抱えている方や摂食障害に悩まれている方などの継続が多かったように思います。

あわせて読みたい摂食障害~症状と受診の目安

カウンセラーになるための心構え
–カウンセラーを続けていくうえで、大変だと感じられることはどのようなことでしょうか?

出産を期に休職した理由の一つでもあるのですが、やはりクライエントがいるお仕事ですので、休みづらい面があると思います。

こちらが体調不良などのやむを得ない理由で予約をキャンセルした際に、理由を根掘り葉掘り聞かれたり、その後のカウンセリングの予約をキャンセルされてしまったり…

特に私のクライエントには、カウンセラーの些細な変化に敏感になる方も多く、妊娠出産についてもなるべく気づかれないように注意していました。

–カウンセラーに必要とされる能力はどのようなものだと思われますか?

インテークでは、例えば「先日刑務所から出所してきた」という方が来られたりもします。そういった方に、平静なトーンで「なぜ(刑務所に)入られたんですか?」「今日はどうされましたか?」と話ができる必要があります。

こちらが動揺したり、構えてしまうと相手もお話しづらくなってしまいますので。

–常に、動じない心が要求されるのですね。

そうですね。

ほかにも、カウンセリング中に「今すぐあなたを殴りたいんですけど、殴っていいですか?」と言われたこともありました。

このように、カウンセラーは少なからず「怖い」と感じる体験をすることがあると思います。

そういった際に支えになるのはやはり自分自身ですので、大事なことは自己理解をしようとし続けることだと思います。

–身の危険を感じることもおありだったのですね。病院によっては、小規模でも警備員が常駐している場合もありますが、病院側のカウンセラーを守る体制はどのようになっていますか?

私の勤めていたクリニックでは、一応「緊急スイッチ」があって、何かの際にはそれを押すことになっています。しかし、いざという時には、自分の身は自分で守る覚悟も必要ですね。

カウンセラーご自身の悩み
–カウンセラーとしての悩みをお聞かせいただけますか?また、その対処方法もあれば、お聞かせください

カウンセリングをしていく上での悩み…というか、壁を感じるのは、決断を委ねられる時です。例えば「離婚したほうがいいのか、決めてほしい」というような相談になってしまうことも多くありました。

依存の一種ではあるのですが、カウンセラーとしては越えられない一線があるので…

そんな時は、医師と連携して治療にあたったり、職場の先輩カウンセラーに相談していましたので、スタッフ同士が信頼できる環境にあることが大事だと思います。

–カウンセラーライフでは、皆さんに「恩師」についてお聞きしています。

職場の先輩カウンセラーが、「恩師」に近いかもしれません。

臨床心理士の場合、やはり大学・大学院で師事する教授というお答えが多いのかなと思いますが、実際に仕事をサポートしてもらいながら、カウンセラーとしてのあり方という点で先輩から学べる事がとても多くありました。

今後取得予定の資格
–今後取得予定の資格についてお聞かせいただけますか?

公認心理師を取得予定です。

受験資格は満たしているのですが、試験の出題範囲が広いので…専門外の部分は、もう一度勉強しないといけないなと感じています。

公認心理師
心理職の唯一の国家資格(名称独占資格)です。2017年公認心理師法の全面施行により定められました。保険医療、福祉、教育、産業などの分野で、支援を求める人やその関係者の相談に応じ、助言、指導、そのほかの援助を行います。また、心の健康に関する知識の普及を図るための教育や情報の提供を行うことも公認心理師の業務として定められています。
–臨床心理士は、今後、公認心理師に置き換えられていくという見方がある一方で、公認心理師の合格者が増えすぎると、質が落ちてしまうのでは、という懸念から、臨床心理士は残っていく、という意見もあるようですね?

そうですね。臨床心理士の場合、更新にはポイントの取得が必要なのですが、そのための研修会や講座に参加するのはやはり大変です。

けれど、新しい研究結果に触れたり、同業者との情報交換ができる機会でもあるので、資格取得者の質の維持という意味で、やはり意義はあるのかなと思います。

研修会などでも話題に上るのですが、公認心理師の制度や資格に不安を感じている方もいますし、私は臨床心理士も更新していく予定です。

–最後に、児童福祉や発達心理ではなく、病院での臨床の方面に進まれた理由をお聞かせいただけますか?

クリニックで実習する機会をいただけたことで、もっと医療での経験を重ねていきたいと思ったのがきっかけです。

児童と比べて大きな変化がはっきりとみられることは少ないですが、じっくり時間をかけて向き合っていく作業が自分には合っていると感じたからかもしれません。

カウンセラーと自己理解