モラハラの特徴
人間関係において、何気ない言動に傷ついたり、逆に自分は悪気はなかったのに、人を傷つけたりすることは少なからずあると思います。それでも、通常は、誤解やすれ違いなど何か原因があり、それを話し合いで解決したり、時間が癒してくれます。
しかし、モラハラは、通常の人間関係上のトラブルとは異なり、特定の原因があったかどうかは関係なく、相手を傷つけることそのものが目的になっていることが特徴です。いわゆる「いじめ」に近い状態です。相手との間に、解決すべき問題が確実にあるわけではないのです。
職場では、「パワハラ」が大きな問題になることがよくあります。パワハラは職権などのパワー(権力)や地位、また能力などを利用した力関係を伴うハラスメントですが、モラハラは力関係を伴いません。したがって、上司からとは限らず、同僚や部下がハラスメントをする場合もあるのです。
そして、このモラハラは職場だけでなく、家庭でも大きな問題になっています。家庭では、夫から妻へのモラハラが多く見られますが、妻から夫へのモラハラも存在します。
被害を伝えにくいのはなぜ?
モラハラには、「他人にその苦しみを伝えにくい」という特徴があります。では、なぜ人に言いにくいのでしょうか。それには、次の3つの理由が考えられます。
陰湿な嫌がらせが中心である
モラハラの加害者は、パワハラのように大声で怒鳴ったり、暴力をふるったりといった威圧的な言動はとりません。「いちいち言わなくても分かるよね?」といった不明確な言い方をすることで相手にプレッシャーを与えたり、言葉以外の視線や身振りで精神的苦痛を負わせたりします。
こういった嫌がらせの行為を日常的に繰り返すことによって、精神的に相手を追い詰め、支配していきます。巧妙な皮肉やほのめかしを使い、陰湿であることから、被害者はその苦しみを誰かに伝えづらいのです。
加害者に裏表がある
上記のような嫌がらせは、二人きりの密室で行われることが多くあります。加害者は、社交的で、周りの人から信頼されている人が多く、二人だけの場面でのみ別人のようにふるまうこともあります。モラハラの代表的な特徴として、「二面性」が挙げられています。
そのため、被害者が周囲に相談しても「そんなことをする人には全然見えない」「あなたに原因があるのでは?」「きっと愛情の裏返し」などと、逆にモラハラの被害者の方が諭されてしまうことがあります。
被害者自身が「悪いのは自分」と思い込んでしまう
理不尽にひどい扱いを受け続けると、「(加害者が)自分を気にかけてくれているからだ」「これも愛情の裏返しなんだ」と自分のなかで理由を作り上げてしまい、一種のマインド・コントロールのような独特の被害者心理に陥ります。
こうしてモラハラを受け入れることで、ますます被害が酷くなるという悪循環を引き起こすこともあります。
このように、モラハラは、目に見える物理的な暴力とも、周囲にわかりやすい直接的な攻撃とも異なるため、モラハラにあっていても周囲の人間が気付きづらく、被害者も相談することをためらいがちだという特徴があります。
まずは、実際に自分の受けている被害が「モラハラである」と認識することが、モラハラ被害から抜け出すために必要な、大きな一歩と言えるでしょう。
モラハラをする人の心理と特徴
加害者は職場でも家庭でも、ターゲットがいなくなったら次のターゲットを見つけてモラハラをすることがよくあります。ターゲットがいなくなっても、人の心を攻撃するという行為をやめないのは、自分の攻撃しやすい相手ならば誰であろうと関係ないからです。
加害者に多く共通するのは、自分の失敗を直視できず、認められないということです。通常であれば、もし自分が何か失敗した場合、自分のどこがいけなかったのか、反省したりすると思います。
ところが、モラハラの加害者は自分の失敗を直視することができず、「自分が悪いのかもしれない」という心の中の葛藤から逃れるために、他人との境界を飛び越えて「相手のせい」にしてしまうのです。
そのため、モラハラの加害者には積極的な悪意はないことが多いと言われています。だからこそ、余計に厄介なことになってしまうのかもしれませんね。
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自分自身に向き合えない心の弱さと、「自分が悪い」ことで傷つきたくないという、自己愛の強さが、モラルハラスメントの根本にあるとも言われています。
モラハラ被害にあいやすい人の心理と特徴
被害者の特徴は、加害者の逆で、なんでも「自分が悪いのでは…」と思ってしまう、いわゆる「いい人」タイプが多いようです。
なぜなら、「いい人」ほど、加害者からの「あなたが悪い」という理不尽なメッセージをまともに受け取る傾向にあるからです。そして、加害者との関係を修復しようとすればするほど、加害者が「相手のせい」にしやすい雰囲気を作る結果となってしまうのです。
もし、あなたがモラハラの被害者だとして、自分を責めるのはやめてください。もしかしたら、あなたがいい人で、加害者はそこにつけこんでいるかもしれないからです。
それ以外にも、加害者が持っていない長所を持った人、またライバルなど、加害者の心に葛藤を引き起こさせるタイプの人も、モラハラを受ける可能性があります。
モラハラへの対処法
被害から抜け出すために、重要なことは「これはモラハラだ」と認識すること。
そして「悪いのは自分ではなく、相手」と気付くこと。これが大きな一歩です。
しかし、すでに自尊感情を傷つけられている被害者にとって、これはとても難しい課題です。
そこで、客観的に自分の状況を省みるために、簡単なチェックをやってみましょう。
もし、当てはまるものが多いようでしたら、モラハラが疑われます。
モラハラチェックリスト 家庭編
- 話しかけても質問しても、無視される。
- 真剣に話しても「くだらない」などと軽くあしらわれる。
- 何もしていないのに舌打ちをしたりため息をつかれる。
- お金の使いみちを事細かにチェックされる。
- 仕事や趣味をけなされる。
- 食事が気に入らないと、食べないで席を立つ。
- 他人からは高く評価されている。
モラハラチェックリスト 職場編
- 無視する。ため息をつく。
- 仕事に必要な情報を教えてもらえない。
- 良くない噂を流したり、誰かが悪口を言っていたという情報を知らせてくる。
- 身体的特徴などの傷つくことを言ってくる。
- 自慢話や苦労話が多い。
- やたらとプライベートなことを聞いて、それをバカにする。
- 少しのことで大げさに騒ぎ立てる。
モラハラから脱出するために
初めのうちは相手にモラハラを「やめさせよう」と思うかもしれません。ですが、その「自分なら相手を変えられるかもしれない……」という期待は、逆に加害者に利用されてしまう原因にもなりえます。
モラハラを受けているなら、まずは心のケアが必要です。そのために、まずは相手から離れること、距離を置くことを第一に考えましょう。相手とは距離を置いて、冷静な気持ちで考えられる状況に自分の身を置くことが大切です。
また、後に法的トラブルが生じても泣き寝入りしないように、できるだけ証拠をとっておきましょう。スマホやICレコーダーで、モラハラの場面を録音することができれば有力な証拠となります。
もし、相手に勘付かれるリスクがこわいということであれば、日記などにモラハラを受けた日時や内容をメモしておくことも有効です。また、メールやLINEの内容を保存しておくことも有効です。
専門機関に相談する
専門機関で相談することも重要です。職場のモラハラであれば、各企業の相談窓口や、外部の相談窓口も利用できます。
また、家庭でのモラハラの場合は、市町村のDV相談窓口、民間サポート団体、あるいは警察の生活安全課などでも相談に応じてくれます。
また、モラハラによって、精神面で苦しい状況に陥ってしまった場合には、精神科や心療内科、カウンセリングルームなどで、心身の回復のサポートを受けて下さい。
離婚を考えたり、法的手段に訴えたいときは、弁護士や法テラスなどの専門機関に相談するのがスムーズな場合もあります。まずは、無料の法律相談で専門家に話を聞いてもらいましょう。
モラハラ被害にあわないために
モラハラの加害者は、「パーソナリティ障害」「発達障害」などと誤解されることがあります。
確かに、パーソナリティ障害や発達障害を持った人の行動パターンには、モラハラ加害者と共通する点があり、そうした人が含まれている可能性は否定できません。ですが、そのような障害や病気があったからといって、その人たち全てが、モラハラをするわけでもありません。
モラハラの予防のためには、まずモラハラというハラスメントがあることを知っておくことが大切です。モラハラ加害者は、最初は小さなワガママを言い、それを聞いてくれるかどうかで被害者になりやすい人を見極めるとも言われています。
いわれのない嫌がらせや理不尽な言動をされた場合は、安易に「自分が悪かったのかも」などとは考えずに、相手と自分の心の線引きをハッキリさせ、客観的に状況を捉えるようにしましょう。そして、誰かに助けを求めるようにしてくださいね。