アニマルセラピーの効用

アニマルセラピーの効用

自分の家や友達の家の飼いイヌ、飼いネコ、あるいは動物園の触れ合いコーナー、野良ネコなどと触れ合った時に、「なんだか心が落ち着く」「心が癒されるなぁ」と感じたことがないでしょうか?

なぜ、人は動物とのふれあいによって癒されるのでしょう。

どうして動物に癒されるの?

動物に接すると、人の体内では通称「幸せホルモン」とも呼ばれる、オキシトシンが発生し、ストレスや不安の軽減といった効果が表れます。

オキシトシンは、直接のふれあいだけでなく、いっしょに遊んだり、アイコンタクトをしたり、意思疎通できているなと感じたりすることでも生じます。

このように、動物には、言葉を介さないコミュニケーションによって、私たちを癒してくれる、特別な力があるようです。

こうした動物による癒し効果を、セラピーとして専門的に扱ったものをアニマルセラピーと呼んでいます。日本でもアニマルセラピーに関する民間資格が存在し、担う人材が求められています。

参考アニマルセラピーの資格を詳しく見てみる|BrushUP学び

アニマルセラピーとは

アニマルセラピーとは、動物とのふれあいによって、傷ついた人の心を癒したり、心身の発達を促したりする医療行為や活動のこと。

イヌやネコなどの小さな動物だけでなく、馬やイルカといった大きな動物も、アニマルセラピーの担い手です。

日本におけるアニマルセラピーには、動物介在療法(Animal Assisted Therapy, AAT)と動物介在活動(Animal Assisted Activity, AAA)の二つの概念が含まれています。

動物介在療法とは、医師、心理士、理学療法士などの専門家が、治療を受ける対象に応じたプログラムを実施し、症状の改善を目的として行われています。

一方、動物介在活動とは、動物との接触を楽しむ活動で、症状の改善は目的とされていません。

どんな場所で行われているの?

アニマルセラピーは、多くが高齢者福祉施設障害者福祉施設などの介護現場で行われていており、他には医療機関(精神科、緩和ケア病棟、小児科など)でも取り組まれています。また、学校や養護施設、刑務所などでも行われることがあります。

表情や感情が乏しい、あるいは感情のコントロールが効かない、人とのコミュニーションが難しいという利用者さんや患者さんでも、動物とふれあうことで表情が明るくなったり、気持ちが穏やかになったり、会話や、やり取りが増えるという効果が出ています。

どんな動物とふれあうの?

イヌ

最もスタンダードなのがイヌによるアニマルセラピーです。専門的な訓練を受けているセラピードッグもいます。人とのアイコンタクトや、一緒に歩く時の速度などのトレーニングを受けています。ベッドでのマナーなども訓練されているので、歩行が難しく、ベッドで過ごすことが多い患者さんでも、安心して触れ合うことが出来ます。

NPOなどでは、一般家庭で暮らしているペットの適性を見て、ご自身のペットと一緒に活動に参加してくれる人を募っている場合もあります。認知症患者さんのデイケアなどで、利用者と動物共に、無理のない範囲でのふれあいを行っています。

ドッグセラピー

ネコ

キャットセラピーと呼ばれています。従順な犬と異なり、猫は自由で気まぐれの性格の子が多いので、周囲のことを気にし過ぎてしまう、うつ病の患者さんのお手本としても、治療に効果的と言われています。

また、ネコと暮らしている人は、血圧や心拍が安定しているという研究結果があったり、ゴロゴロ音の周波数が人間に幸福感を与え、免疫力を高めたり、うつ病の治療に効果があるとも言われています。

通称ホースセラピー(乗馬療法)、正式には、ホース・アシステッド・セラピー(HAT)と呼ばれています。ヨーロッパでは健康保険が適応されているほどポピュラーな治療方法です。

乗馬、馬のお手入れ、エサやりなど、馬とのふれあいを通して症状を改善していきます。

心身に障害を持つ方の精神機能や運動機能の改善や、不登校や引きこもりの子ども達のストレス解消や、孤独感の軽減、自己肯定感向上などの効果が見られています。

日本でも、取り組んでいる乗馬クラブが増えてきているようです。

参考みんなの乗馬 ご存じですか?ホースセラピー

イルカ

ドルフィン・アシステッド・セラピー:Dolphin Assisted Therapy (DAT)と呼ばれています。イルカとの触れ合いによって、症状を改善を目指します。

段階を踏みながら、イルカと一緒に海に入り、ふれあいます。

アトピー性皮膚炎の患者さんの海水療法の補助として、また、心身障害の方の症状緩和、学習障害や自閉症の方の発達支援などを目的として行われます。

ストレスを抱える方に対して、心身機能の改善、生活の質(QOL)の向上の効果もあります。

参考一般財団法人 健康科学財団 DAT

イルカに関しては、セラピーとして受ける機会はあまりないかもしれませんね。しかし、動物はに癒される機会は、専門機関でのアニマルセラピーに限ったことではありません。

例えば、家庭で暮らしているイヌやネコなどのペットとの触れ合いでも、私たちは心が癒やされています。

また、最近は猫カフェだけでなく、フクロウ、インコなどの鳥類や、トカゲ、ヘビなど爬虫類などの動物カフェなども流行っています。

未来のアニマルセラピーはこうなる?

アニマルセラピーで活躍する動物たちは、どんな動物でも良いというわけではありません。人に慣れていて、衛生的であることが何より大切です。動物達も心身が傷ついている場合にはコミュニケーションが難しくなりますし、アレルギーや人畜共通感染症などの問題もあります。

そんな動物たちを育てるには一定の施設や専門的な人材が必要なため、どこでも誰でも簡単にできるというわけではありません。

そこで注目されているのが、動物型ロボットです。

動物型、セラピー型ロボット

ロボットであれば、糞や食事の世話、散歩の必要もなく、特別な施設もいりません。それに、たしかに衛生的です。

ロボットはすでに実際の老人福祉施設などで使われ、その効果も認められています。
たとえば、アザラシ型の「パロ」というセラピー型ロボットは、2002年には「世界でもっともセラピー効果があるロボット」としてギネスブックに認定され、医療用として活躍しています。

一般向けにも犬型ロボット「aibo(アイボ)」が売られていますが、最新型には人工知能(AI)が搭載され、利用者の表情を読み取り、それぞれに個性もでてくるというから驚きです。

また、2018年秋には、しっぽのついたクッション型セラピーロボット「Qoobo(クーボ)」が新たに発売されました。

生きた動物にしかできないこともありますが、逆に本当の動物にはできないことが、ロボットにはできるのかもしれません。

アザラシ型メンタルコミットロボット・パロ 出典:産総研

動物による癒しの効果についてご理解いただけたでしょうか。みなさんも、動物、動物ロボット問わず、是非、お好きな動物とふれあう機会を作って癒されてください。