境界性パーソナリティ障害(BPD)

境界性パーソナリティ障害(BPD)の典型例とその対処法

境界性パーソナリティ障害(BPD)

境界性パーソナリティ障害(BorderlinePersonalityDisorder)は、思春期から成人期に表れるパーソナリティ障害の1つです。「ボーダーライン」「BPD」等と略され、患者数の増加に伴い、最近よく話題に取り上げられています。非常に衝動的で感情の起伏が激しく、対人関係がいつも不安定です。では、どのような人がBPDと診断されるのでしょう。今回は、診断基準を中心にBPDの特徴とその対処についてお話ししていきます。

境界性パーソナリティ障害(BPD)とは


精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-5)」という診断マニュアルがあります。アメリカ精神医学会が発行しているものですが、日本でもこの診断基準はよく使用されています。

この「DSM-5」では、BPDの診断基準はどのように書かれているのでしょう。ここでは、その中から何点か簡単に内容をご紹介します。

  1. 人から見捨てられることを避けようとして、なりふりかまわず努力をする。
  2. 人に対して理想化したり、こき下ろしたり、両極端な価値づけをする。対人関係が不安定。
  3. 自己を傷つける行動をする。(例:浪費、危険な性行動、むちゃ食い等)
  4. 自殺の行為、そぶり、または自傷行為のくり返し。(例:リストカット)
  5. 気分が変わりやすく不安定。
  6. 怒りの感情をコントロールができない。(例:かんしゃく、けんか)

また、BPDの人はアルコール依存症パニック障害過食症などの摂食障害、その他様々な症状を同時に持っていることが多いです。本人が生きづらく感じ、辛いのはもちろんのこと、家族や恋人、友人などBPDの人を援助しようとする周囲の関係者も苦しみます。著名人では、太宰治、尾崎豊、マリリン・モンロー、ダイアナ妃などがBPDであったのではないかと言われています。人を惹きつける魅力を持つ人が多いということもよく言われます。

では、自分がBPDの可能性のある場合や友人や家族がBPDにあてはまる場合、どのように対応すればよいのでしょうか?事例をご紹介しながら、詳しく考えていきたいと思います。

境界性パーソナリティ障害(BPD)の事例

まず、A子さん(架空の人物)についてお話しします。

【A子さんの事例】
A子さんは20歳の大学生。パッと見、華やかで人を惹きつける魅力を持っています。しかし、A子さんは非常に情緒が不安定で、恋人のB君や友だちは振り回されがち。A子さんはつきあい初めは明るく楽しいのですが、だんだん人を試すような行動をとり始めます。例えば、夜中に電話で「今すぐ来てくれないと死んじゃうから。」と言ったり、デート中、ふざけて車道に飛び出したり、ガラスの破片を握りしめてみたり…と、ハラハラさせられる行動をとるのです。

恋人のB君は最初は「A子のために力になりたい。」と思っていましたが、だんだん精神的に疲れてきました。しかし、距離を置こうとすると、「ひどい人!」と激怒したり、「今から飛び降りる…」などの言動をしたりするため、なかなか離れることもできません。また、A子さんは中学生の頃からリストカットをしていたようです。B君や友人は、A子さんのリストカットをやめさせようとしましたが、「誰も私のことをわかってくれない。」「みんな大嫌い。」などと怒るので、周囲は次第に空しさを感じるようになっています。

ふりまわされていると感じたら?
A子さんの事例では、B君はA子さんの行動にふりまわされ、ヘトヘトに疲れてしまいました。でもB君にしてみれば、言うことを聞かざるをえなかったのです。

BPDの人とのつきあいは、非常に難しく、医師やカウンセラーでさえも苦慮します。しかし、BPDの本人が一番苦しいのだということを忘れないでください。そのうえで、BPDの恋人や友だちを持つ人は、本人との距離のとり方について、カウンセラーなどに意見を求めるとよいでしょう。

境界性パーソナリティ障害(BPD)への対処法

自分がBPDの可能性のある場合や、友人や恋人など周囲の人がBPDにあてはまる場合、どのような対処をすればよいのでしょうか。具体的に考えてみましょう。

自分がBPDだと感じたら

自分自身の「生きづらさ」や「苦しさ」の原因がBPDではないかと思ったら、「境界性パーソナリティ障害」について、書籍やインターネットで調べてみましょう。大型書店の心理学コーナーなどに一般向けの本が売られています。それらの本には、BPDの治療体験談や円滑な人間関係のためのコツなどが書かれています。「誰もわかってくれないから」と1人で悩むのは危険です。つらくて誰かに相談したいと思ったら、医師やカウンセラーなどの専門家に相談してみましょう。どこで相談してよいかわからない場合は、各地の精神保健福祉センターなどに問い合わせてみてください。

身の周りの人がBPDだと感じたら

人間関係は「近すぎず遠すぎず」を意識しましょう。

BPDの場合の良好な人間関係のキーワードは、心理的な「適度な距離感」です。心理的に近づき過ぎて、相手を特別扱いすると、感情のコントロールが効かなくなる可能性があります。反対に、心理的に距離をとりすぎて突き放してしまうと、相手が「見捨てられた」という感情を高めてしまい、気持ちが不安定になります。周囲が気をつける点としては、

    1. 不可能なことを要求されたら断る
    2. 攻撃的な言葉は「症状」の1つと割り切る
    3. 起こしたことの責任は本人に引き受けさせる
    4. 「大丈夫」と言ってあげる
    5. 周囲の者同士で本人の様子や行動についての情報交換をマメにする

などがあります。

つまり「近すぎず遠すぎず」の適度な距離感が必要です。「決して見捨てないよ。」という優しいメッセージを送りつつ、「ダメなものはダメ」という厳しさも大切。難しいとは思いますが、この距離をとらなければBPDの本人も周囲も苦しむことになります。BPDは中年期に入ると落ち着いてくるといいます。ゆっくりと長い目で見守ってあげましょう。