冬季・夏季うつだけじゃない!季節性うつのチェックと対策

冬季うつだけじゃない、季節性うつ

「毎年、この季節になると、なんだか不調だなあ…」そんなふうに感じること、ありませんか?
今回は、特定の季節にだけうつ病の症状が現れる「季節性うつ/季節性情動(感情)障害」という病気についてご紹介します。

季節性うつ・季節性情動(感情)障害とは?

季節性情動障害(Seasonal Affective Disorder; SAD)とは、特に思い当たるストレス要因がなく、決まった季節にだけ、うつ病の症状があらわれるものです。
いわゆる通常の「うつ病」とは違い、発症の引き金となるストレス要因がありません。

一般的に、急に寒くなったり暑くなったりするような気温、気圧、湿度、日照時間など、環境の変化に過敏に反応し、調子を崩すものです。

季節性うつは、男性よりも、女性の方が罹る割合が多いとされ、その理由には、女性ホルモンの変動に加え、女性の身体の方が環境の変化に敏感なことが挙げられています。

季節性うつ 症状チェック

以下のような症状がないか、調べてみましょう。

  • 不眠、あるいは過眠
  • 食欲が減り体重が減少する、あるいは食べ過ぎて太った
  • いつもは楽しめることが楽しめない
  • 気分が落ち込むことが多い
  • 疲れやすく、身体を動かすのがおっくう、横になっていたい
  • いつも通りに仕事をうまく処理できない
  • 思考力や集中力が低下した

※ 3つ以上が2週間以上持続していて、日常生活に支障がある方は要注意です。

季節性うつの症状の多くは一般的なうつ病によく似ていますが、これらの症状が決まった季節にだけ現れ、その季節が過ぎると症状が治まるものの、再び繰り返すという「反復性」が特徴と言えます。

また、うつ状態と躁状態を繰り返す「双極性障害」と関連があるとも言われています。

アメリカの精神医学的診断基準であるDSM-5では、双極性障害および大うつ病性障害の中で「季節型」として取り上げられています。

冬季うつ、夏季うつ…他

冬季に発症が多いとされるため、冬季うつ(別名:ウィンターブルー)という名前は耳にしたことがある人もいるかもしれませんね。冬季うつの発症時期は10月~11月頃で、日が長くなる3月頃に症状が治まってくると言われています。過眠、過食(特に炭水化物や甘いものを中心に食べ過ぎる)、倦怠感や集中力低下などが代表的な症状です。

一方で、少ないと言われてはいますが、夏季に抑うつエピソードを反復する「夏季うつ」というものもあります。夏季うつの発症時期は5~9月頃で、食欲減退、不眠・抑うつ気分などの症状が多いとされています。症状が夏バテに似ているとも言われていますので、気づかない方もいるかもしれませんね。

冬季うつ、その原因は?

冬季に発症が多いとされる原因は、秋から冬にかけて、日照時間が短くなるためと言われています。日光に当たる時間が少なくなると、脳内で、睡眠の調整や神経の安定に関わりのあるセロトニンが減り、脳の活動が低下してしまうため、うつ病になりやすくなると考えられています。

また、体内時計をつかさどるメラトニンも日光に当たることで分泌されるため、日照時間が短くなると、分泌のタイミングの遅滞や過剰によって、体内時計が狂ってしまい、夜眠れない、朝起きられない等の症状が引き起こされます。

緯度の高い地域、白夜のある北欧の国などは、特に日照時間が短くなるため、冬季うつにかかる人の割合も増える傾向があると言われています。また、住まいや仕事の環境によって日に当たる機会が極端に少ない人は、冬ではなくてもかかりやすいようです。

ですので、冬季うつは春が近づき、日照時間が長くなっていくと、少しずつ症状が治まっていきます。

冬季うつは、日照時間が長くなっていくと少しずつ症状が治まる。

もしも季節性うつになったら…

症状が重く、学校や仕事に行けない、何もする気が起きないなど、日常生活に支障が出ている場合には、早めに心療内科、精神科、メンタルクリニックを受診し、治療を受けましょう。
治療方法には光療法、薬物療法、認知行動療法などがあります。

認知の歪みと認知行動療法。物事の捉え方によって心の状態は変わる
友達にメールをしたけれど、なかなか返信が返ってこない…こんな時、あなたはどう思いますか?「きっと忙しくて携帯を見ていないんだろう」「私、何か失礼なこと書いちゃったかな」など、捉え方は人それぞれですよね。この物事の捉え方を「認知」と言います。認知に極端な偏り(認知の歪み)がある場合、心理的問題を抱えやすいと言われています。

光療法は、ライトボックス(人工光)を使用して、冬の日照不足を補う方法です。

薬物療法では、一般的には通常のうつ病と同様に、SSRIなどの抗うつ薬によって症状を緩和します。

認知行動療法は、物事の考え方や受け取り方のクセを修正し、ストレスに対応していくための考え方を持てるようにしていく心理療法で、再発防止に有効とされています。

季節性うつの予防と対策

◆季節による影響は一年中

冬季うつ、夏季うつを中心に紹介してきましたが、3月・4月の春の時期も、寒暖差や気圧変動が大きく、自律神経の乱れやすい時期です。また、卒業や入学、就職、昇進、引越しなどの環境の変化もあり、ストレスのかかりやすい時期でもあるでしょう。

自律神経失調症とは~長引く不安や不調の原因になる事も
「自律神経」という言葉、聞いたことはあるけれど、いまいちよく分からない、上手く説明はできない…こんな方は多いのではないでしょうか。 原因不明のだるさが続いている、なんとなく不安な感じがある…そんなあなたは、もしかして「自律神経失調症」かもしれません。

また、秋は夏休み明けの生活の変化や、夏の暑さによる疲れなどで、心身ともバランスを崩しやすい時期と言えます。

このように見てきますと、春夏秋冬、どの季節においても心身の不調は起こる可能性があり、どの季節においても、季節の変化による心身への影響を完全に避けることは難しいのかもしれません。ですから、日々、少しずつ出来ることで予防していくことが大切です。

◆時々、自分の心身の状態に目を向ける

自分の心身の変化に目を向けられるようになると、過ごしやすい環境を自分で調整することが出来るようになっていきます。

疲れたら休憩を…

ちょっとでも不調を感じたら、「これくらいなら大丈夫」ではなく、一息つきましょう。「たいしたことない」「これくらいでは休めない・・・」と無理を重ねていくと、気づかないうちに状態は悪くなってしまいます。我慢しすぎずに、きちんと休みましょう

時々振り返りを…

定期的な振り返りも大切です。心の状態、体調の変化などを手帳やスマホにメモしておく良いでしょう。自分の心身の変化について、傾向が見えてくることで、対策を立てることも可能になります。一人で振り返るのが難しい場合は、カウンセリングなどを利用してみるのも良いでしょう。

◆日常生活を整える

症状がまだ重くない人、今は問題ない人も、長期的な視点で睡眠・食事・運動のバランスを意識することも大切です。お休みの日でも、毎朝、できるだけ同じ時間に起きて、日光を浴びる等、体内時計を整えていってくださいね。

その季節が過ぎれば回復すると分かっていても、季節性うつの症状はとても辛いものです。決まった季節に心身の不調が見られる方は無理をせず、心療内科や精神科を受診してみてください。