兄弟の心理「生まれた順番で性格は決まる?」

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一人っ子の心理

一人っ子は神経質で、人に頼る気持ちが強い?

第一子ときょうだいの関係

第一子として生まれた子どもは、しばらくの間、一人っ子として成長し、親や祖父母からの愛情や期待を一身に受けます。ところが、下の子が生まれ、弟や妹ができると、そのポジションは奪われてしまいます。同時に「自分はお兄ちゃんなんだ」「自分はお姉ちゃんなんだ」という意識が育ち、弟や妹の行動を許容したり、養護したりすることが出来るようになります。

そういった体験の中で、第一子は、何かする時には人の迷惑になるかどうかをよく考えたり、欲しい物を遠慮したりするようになっていきます。そして、控え目で、慎重で、落ち着きを持つようになります。また、弟や妹に、自分の用を人に頼んだりするなど、ちゃっかりしている一面が見られることもあります。

一方で、他の子どもと比べて、他人に同調しやすいという傾向を持ちます。不安になりやすく、不安になった時には他人を頼るという特性があります。

真ん中っ子ときょうだいの関係

真ん中っ子は、生まれてきた時は末っ子として成長しますが、そのうち年下のきょうだいが出来ると、第一子と同じように、自分を抑えて、兄・姉の役割を果たそうとするようになります。そして上下のきょうだいと調和を保とうとします。他の子どもに比べて、きょうだい関係にまつわる体験を、量・質ともに豊富に持っています。

そういった体験の中で、真ん中っ子は、社交的だけど、遠慮がちで、他人の目を気にするようになっていきます。また、必要以上に自己を表現しようとするか、反対に自己表現を抑えるようになります。

一方で、常に愛情の不安・不満につきまとわれます。第一子は、過去に愛情を独り占めした経験を持ちますし、末っ子は、現在満たされています。それに比べて、真ん中っ子はその経験が乏しくなるため、ひがんだり、ひねくれたりしがちです。

末っ子ときょうだいの関係

末っ子は、きょうだいの中で最後に生まれます。下のきょうだいが居ませんから、「末っ子」としての役割は不変のものとなります。常に家族の最年少者として、注目や関心を集め続けます。親だけでなくきょうだいも、「わがままだけど可愛い」「いつまで経っても手元にいて欲しい」といった期待を末っ子に抱きます。いつまで経っても、生まれた時と同じように赤ん坊扱い、幼児扱いされやすいのです。

そういった体験の中で、末っ子は、甘えん坊で、依存的になりやすいと言われています。少しでも困ることがあると、人に頼ろうとします。また、人にほめられたりすると、すぐ調子に乗ります。しかし、裏を返せば、周囲から愛されやすい、甘え上手とも言えます。

おしゃべりで、外で遊ぶことを好み、活動的です。はきはきしていて、朗らかな性格傾向にあります。

次は、一人っ子の性格について見てみましょう。「一人っ子」はきょうだい不在の中で育ち、親と子どもが一緒に居る時間が必然的に長くなります。きょうだい不在がどのような影響を与えるのでしょうか。

一人っ子ときょうだい不在

一人っ子は、自分以外にきょうだいが居ません。第一子としての役割を持ちながら、末っ子のような役割を期待されることもあります。親と子どもが一緒にいる時間は長くなり、親は過保護・過干渉になりがちです。

そういった体験の中で、一人っ子は、自己中心的で、神経質で、人に頼る気持ちが強くなっていきます。また、きょうだいを持つ人は、幼い頃から、親子関係だけでなく同年代の「子ども同士」の関わりを経験していますが、一人っ子の場合、子ども同士の関係を持つ機会が少ないため、競争や協力、妥協、忍耐といった社会的技能を身につけることが難しいと考えられています。

一方で、一人っ子は、よく考えてから行動するという傾向があります。これは、きょうだいと協力したり、一緒に考えたり、年長のきょうだいを真似する機会が得られなかったからこそ、自分自身で問題に取り組み、解決していこうとすることが出来る一人っ子の能力とも言えます。

本当に出生順位が性格を決めるの?

過去の研究では、以上のようになっていますが、現代では、育児環境が大きく変化し、家族関係も昔とは異なってきています。

家庭における人間関係は、社会性の発達の基盤を作ります。ですが、現代の子どもたちの多くは、早い年齢のうちに保育園・幼稚園に入り、同年代の子どもたちと遊んだりすることを通して、家族以外の関係も築いていきます。

さらに、一人部屋を持ち一人で過ごす時間が増えていることや、習い事などできょうだいと遊ぶ時間が減少していることもあり、家族が一緒に過ごす時間は減って、結果的に家族から受ける影響は少なくなっているとも考えられます。

最近の研究でも、親の養育態度が子どもの性格形成に与える影響は、以前よりも小さくなっていると言われています。

そのため、実際、パーソナリティ(人格)が確立され始める大学生の頃には、出生順位によって性格特性が異なる、ということは一概には言えなくなっているようです。

それでも、「一人っ子っぽいね」「お姉ちゃん(お兄ちゃん)みたいだよね」「弟(妹)がいるってよく言われない?」という会話が日常生活で出てくるのは、やはり出生順位と性格との関連性が根強く残っているからなのかもしれませんね。