…そう考えれば考えるほどわからなくなったり、「自分」が見えなくて悩んだりしたことはないでしょうか?
人生を歩んでいくうえで、自分自身に目を向けるのはとても大切なことです。しかし、どうすれば自分を理解することができるのでしょうか。
今回は、自分を理解することについて考えてみたいと思います。
自分を理解する…とは?
なかには「自分のことは自分が一番わかっている!」と思っている方もいるでしょう。しかし、そもそも、自分自身について、正確に理解することは可能なのでしょうか?まず、それについて考えることから始めてみましょう。
誰かと会話している時に、「あなたって、△△だよね」と、自分では思ってもいなかった面を指摘され、驚いたことはありませんか?
言われてみて、「そんなことはない」と感じることもあれば、「そう言われてみると、そうかも」と納得できることもありますよね。
そもそも、自分が思っている自分と、他人に思われている自分には、ギャップがあるのが普通です。
なぜなら、自分についての理解というものは、自分の「意識」できる範囲内にとどまるから。つまり、自分が意識していない部分は、自分では気づけていませんが、他人には見えてしまうことがあるということです。
また、物事を見るとき、理解するときには、どうしても自分のフィルターがかかってしまうことがあります。
ですから、自分を正確に理解することはできないものであると言えるでしょう。
しかし、自分を理解しよう、客観的に見てみよう、と努めることはできますし、この「努める」ことはとても大切なことです。
自分を理解する方法
自分を理解する方法としては、「自己分析」、「他人からのフィードバック」、「客観的なデータ」の3つが挙げられます。いくつか、具体的な方法を紹介しましょう。
①自分とは…と考えてみる
自己分析の方法に、クーンとマクポートランド(Kuhn,M.H.&McPortland,T.S.)の20答法というものがあります。
「わたしはだれ(Who am I)?」という質問に対し「わたしは…である(I am…)」という文章を思いつくままに20個完成させる方法です。
<実施方法>
まず、紙と鉛筆を用意します。
そして、「私は、 です。」という空欄のある文章を20個、書き出します。
2.私は、 です。
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20.私は、 です。
準備が出来たら、空欄を埋めていきましょう。
どんなことでも構いません。性別、年齢、家族構成などのプロフィールでも良いですし、好きな物、嫌いなもの、考えていること、理想など、何でも好きな事を思いのままに書きこんでいきましょう。
書き終えたら、内容を見てみましょう。どんな内容になるでしょうか?20個も挙げるのはなかなか難しいという方もいらっしゃるかもしれませんね。
外見的なことについて書いている内容が多いでしょうか?それとも、性格について書いているほうが多いでしょうか?
また、肯定的(ポジティブ)な内容、否定的(ネガティブ)な内容、どちらが多く書かれていますか?
この20答法を通して、自分という存在を、自分自身がどのように評価しているのかが見えてきます。
普段あまり意識していなかったことや、気付いていなかったことが見えてきて、客観的に自分を見つめることができます。
これだけでも、少し自分というものの傾向が見えてくるのではないでしょうか。
②他者を通して、自分の知らない自分を発見する
自分で思っている自己イメージと、他者から見たイメージには、ギャップがあることは先ほどお伝えしました。
自分について他者から普段どのように言われることが多いか、言われて印象に残っていることなどを思い出してみると、自分自身に対する新しい気づきがあることでしょう。
他人からのフィードバックに関係するものに、「ジョハリの窓」というものがあります。産業カウンセラーの養成講座でも取り上げられています。
これは、1955年にジョゼフ・ラフトとハリー・インガム(Luft,J.&Ingham,H.)によって提示された概念です。
ジョハリの窓とは、「自分―他人」「知っている―気づいていない」の2つの軸から構成される4つの窓で出来ています。
自分は 知っている |
自分は 気付いていない |
|
他人は 知っている |
開放の窓 | 盲点の窓 |
他人は 気付いていない |
秘密の窓 | 未知の窓 |
「開放の窓」――自分も他人もわかっている部分。
「盲点の窓」――自分は気がついていないものの、他人からは見られている部分。意外な長所や短所、意識していなかった癖など。
「秘密の窓」――自分では認識しているが、他人には知られていない部分。コンプレックスや過去の失敗、トラウマなど。
「未知の窓」――自分も他人も気づいていない部分。
この「ジョハリの窓」が示していることは、他者とのコミュニケーションを通じて、気づきを得て、自己理解が深まっていくということです。
周囲との交流を通して、自分も他人も知っている「開放の窓」の領域を拡げていくことが、対人関係を豊かなものへと変革していくとされています。
③心理検査などの客観的なツールを用いる
適性検査、性格検査などの心理検査を活用して、自分の価値観、興味などを客観的に見ることもできます。
心理検査には無意識的な面も反映されます。先ほどの「ジョハリの窓」でいうと、「未知の窓」の部分を知る手掛かりになることもあります。
他人からみた「自分」、心理検査など客観的なデータが示す「自分」は、自分が思っている自分のイメージとは少し違うと感じることがあります。
この「少しの違い」を知っておくこと、自分についての情報の一つとして受け止めておくことは大切です。
困ったときになにかのヒントになるかもしれません。
検査の結果から、自分自身がどう考え、どのように認識するかが重要です。
ただし、心理検査は分析と解釈が非常に難しいため、専門職の方にとってもらうことが望ましいでしょう。
臨床心理士の在籍するカウンセリングルームや心理臨床オフィス、学生相談室、また、病院やクリニックでも受けることができる場合もあります。
なお、インターネットに載っている心理テストなどもありますが、簡易的なものですし、信憑性のないものもあります。あまり鵜呑みにせず、あくまで参考程度にしましょう。
特に、現在何らかの精神的な疾患を抱えている方は、安易に行わないように気を付けて下さい。
自分に意識を向けること
「自分を理解する」ということについて、考えが深まりましたでしょうか?
自己理解に努めることは、自分の気質、性格、考え方の傾向、態度・行動等々が見えてくることに繋がります。
自分が大切にしている価値観や興味、能力などについて、新しい気づきもあるかもしれません。逆に、見たくないものを見てしまった気分になることもないとは言えません。
もちろん、無理をする必要はありませんが、自分の特性を知ることは非常に重要なことです。何かを始めたり、計画する際にも役立ちますし、対人関係をスムーズにするためにも大切です。
まずは、自分では気づいていない「盲点の窓」から、自分のことを少し考えてみませんか?