現役スクールカウンセラーに聞く「SCのお仕事」

カウンセラー プロフィール

現役スクールカウンセラー

神奈川県横浜市出身、心理学修士(明治学院大学文学部心理学科/明治学院大学大学院心理学研究科心理学専攻)。都内の中高一貫校にてスクールカウンセラーとして勤める傍ら、心理にまつわるコラムの執筆や、心理コンテンツの作成を手がける。1児の母として、子育てと仕事を両立中。

<<前ページ1 スクールカウンセラーのお仕事~守秘義務や報告義務について

–「カウンセラーライフ」は、カウンセラーになりたい方や、カウンセリングの技法や心理学を現在の仕事や自身の生活に役立てたい方向けのサイトです。スクールカウンセラーになりたい方も読まれていると思いますので、具体的なお仕事の現場がイメージができるようなお話をお聞きしたいと思っています。例えば、なにか細かいテクニックや、普段使われている道具や、ツールとかはありますか?

道具…はあまり使いませんが、中学の男子生徒ですと、年齢的にあまり言葉で気持ちを表現するのが得意でなかったり、言葉にならない感情を抱えている場合もありますので、芸術療法(絵画療法など)、遊戯療法などを行うことはあります。スケッチブック、色鉛筆、クレヨン、折り紙は常備しています。

–面談中に、メモは取られていますか?

メモは、生徒との面談では基本的にとらないようにしています。ノンバーバルな情報を見落としてしまう可能性があるからです。ただ、相談の中で登場人物が多く、関係が複雑な場合、状況を正しく把握するために、「書いてみるね」と断わってから、図に書き起こし、一緒に確認したりします。

–それでは、スクールカウンセラーに向いている人、そうでない人、なにかポイントがあればお教えください

スクールカウンセラーに限らずですが、他人=相談者の問題を、自分の問題と分けて考えられない人には、カウンセラーという仕事はとても難しいと思います。友人の相談に乗るくらいであれば、問題ないかも知れませんが、仕事にしてしまうと大変だと思います。

スクールカウンセラーに関しては、生徒に関わる人、つまり家族、クラスメート、教員、外部関係機関などとの関係調節や介入を求められる場面が、他のカウンセラーよりも多いです。

ですから、色々な立場の人とコミュニケーションが円滑に取れる人が、向いているのではないでしょうか。

カウンセラーになるための心構え
–スクールカウンセラーを目指す人に、必要な心構えをお聞かせいただけますか?

やはり、教員とのやりとりはスクールカウンセラーの仕事の割合として大きいです。また、保護者とのやり取りや、生徒に関わる人たちの関係促進の役割もあります。ですから、単純に、子どもの悩みを聞く仕事と捉えていると(学校の中でのカウンセラーの役割を果たすのは)難しいと思います。

自分から相談に訪れる生徒は「相談するモチベーションがある」という点で、状況はそこまで悪くないケースが多いと言えます。ですが、教員や保護者から相談を受けたり、彼らの勧めで連れて来られたりするケースでは、本人に問題意識が低かったり、改善の意思がないため、なかなか本人の意識が変わっていかないことも多いです。

周囲の人が問題に感じ、カウンセラーの立場からも、サポートの必要があると判断した場合であっても、本人にほとんどアプローチが出来ない事もあるということは、知っておいた方が良いかもしれません。

ただ、教員や保護者の相談を聞くことで、彼らの心が安定して、間接的に本人の安定につながることもあります。生徒を取り巻く人々のケアもとても大切です。

スクールカウンセラーとしての対応が難しい問題は、学校医の精神科医の先生に相談したり、お任せすることもあります。また、カウンセラー自身にとっても、自分の問題を相談できる人や場所を確保しておくことが大事です。

–最後に、スクールカウンセラーを「やっててよかったな」と思えたエピソードを、お聞かせいただく事はできますか?

カウンセリングを継続していく中で、問題を抱えていた生徒が、自立して、自分で考え、自分で選択肢を選べるようになり、カウンセラーが不要になったなと感じられる瞬間があります。その時が、いちばん嬉しいですね。

また、学校特有な点で言えば、卒業時に挨拶しに来てくれる生徒もいて、無事に卒業をしていく彼らを見られるのがとても嬉しく思います。中には転学など、進路変更をする生徒もいますが、本人が納得して決められた時は、とても素敵な表情をしていますから、送り出す側としても達成感がありますね。