人はなぜ嘘をつく?嘘の見破り方は?心理のプロに聞く「嘘」の真実

詐病

子供の嘘、同僚の嘘、恋人の嘘、著名人の嘘…世の中には嘘があふれています。「嘘をつく」という行為は一般的によくないイメージがあるのにも関わらず、私たちはどうして嘘をついてしまうのでしょうか。今回は「嘘をつく」という行為の背景にある心理に目を向けてみましょう。

嘘をつくのは何歳から?

まずはじめに、人間は何歳ごろから嘘をつくようになるのでしょう。
ここで、嘘について多くの研究をしているLewisらの1989年の実験をご紹介します。「見てはいけない」と約束したおもちゃを見てしまった2歳9カ月~3歳1カ月の子供が、おもちゃを見たか尋ねられた時に嘘をつくかどうかを検証しました。

すると、見てしまった子供のうち、38%が「見ていない」と答えました。

つまり、言語のやり取りが可能となる3歳頃には、人は嘘をつくようになるという事です。意外にも、とても幼い頃から人は嘘をつくのですね。

ただ、この実験で、「見ていない」と嘘をついた子どもに、「何のおもちゃだった?」と尋ねると、3歳くらいでは、素直に見たおもちゃを答えてしまったとのこと。一貫性のある嘘がつけるようになるのは7歳頃なのだそうです。

子どもが嘘をつくのは悪いこと?

嘘をつくのはいけないことだなあと思っていても、大人になって嘘をつかなくてはいけない場面は出てきますよね。全部バカ正直にやっていたら、うまくいきそうなことだってダメになる…そんなことを誰に教わるでもなく私たちは、成長する過程で自然に学んでいきます。

子供たちも同様です。嘘をつくことによって、自分を主張し、自立への第一歩を踏み出していくのです。「嘘をついたらダメ」と言われてきた人も多いでしょうし、親になった自分が自分の子供に「嘘をついたらダメ」と教えることも少なくないでしょう。

悪いことを諭すのは親の役割でもあるので、正しいのですが、「どんな嘘でもついたらダメ!」と頭ごなしに否定すると、子供の健全な成長を妨げる恐れがあるので注意しましょう。

また、子供は、自分の中の空想世界を、本当のことのように思って話すことがあります。そのため、本人に嘘をついている自覚はありません。そして、そのような嘘は、普通成長するにつれ、なくなっていきます。その時の状況を見て、親が子供の嘘について、きちんと判断することが大切です。

大人も嘘をつく

「嘘も方便」という言葉があるように、私たちは嘘をつかなくてはいけない場面に時々出くわします。

例えば、

  • 妻の作ってくれた料理が美味しくなかったけれど、美味しいと言う(思いやりの嘘)
  • オバケ屋敷で怖くないのに、怖いふりをして彼に守ってもらう(受容を求める嘘)
  • 仕事の会議で、本当は自分の意見があるのに、ないふりをして、上司に同調する(葛藤回避の嘘)

などです。他にも、失敗したことを責められた時の言い訳や、自分をよく見せたいがための見栄も嘘の一種と言えるでしょう。これは、自身や相手を守るための行為であって、心の健康を保つためには必要なものなのです。

また、相手を思って真実を伝えない場合もあるので、「嘘をつくのは悪い事」と一概には言えません。ただ、相手を思ってついた嘘でも、時には相手を傷つけてしまうこともありますが…。

あなたはどのタイプの嘘をつきがち?

ここで、もう少し詳しく嘘の種類について見ていきましょう。

嘘は、次の12種類に分類できると言われています。言い換えれば、この12種類が、人が嘘をつく理由に当てはまるということです。

  1. 予防線…予測されるトラブルを事前に避けようとする嘘
  2. 合理化…失敗した時に言い訳をする嘘
  3. その場逃れ…ありもしないことを苦しまぎれに言う一時しのぎの嘘
  4. 利害…主に金銭問題などで、自分が得をする形にもっていこうとする嘘
  5. 甘え…自分を周囲に理解してもらいたくてつく嘘
  6. 隠し…自分のしてしまった罪を隠そうとする嘘
  7. 能力・経歴…相手より優位に立つためにつく嘘
  8. 見栄…自分をよく見せるためにつく嘘
  9. 思いやり…相手を傷つけないようにつく嘘
  10. 引っかけ…からかって相手をだます嘘
  11. 勘違い…自覚はなくても、知識不足などから結果として嘘になってしまうもの
  12. 約束破り…意図的でなくても、約束が果たせなかったりして結果として嘘になってしまうもの

いかがでしたか?こうしてみると、「私は嘘なんて滅多につかない」と思っている人でも、心当たりがあったりするのではないでしょうか。

大人になっても嘘がどうしてもやめられない人は…

こうやって見ると、嘘をつかないほうが難しいことがよくお分かり頂けるかと思います。仕方なくつく嘘など、嘘は良くないと思いながら、ついつい言ってしまう嘘は、ついたとしても仕方ないのかもしれません。しかし、嘘をつくことが癖になってしまっている人は、虚言癖と呼ばれる事があります。

そのような人は、「有名企業に勤めている」「芸能人と友達」などと自分を大きく見せるような嘘、また、「大変な病気にかかっていて、来年まで生きられないかも」など同情を引こうとする嘘をつきます。

原因は自分を良く見せたいという虚栄心や、自信の無さ、劣等感、孤独や寂しさなど、たくさん挙げられます。

虚言癖の人は、多くの場合、「自分は嘘をついている」という自覚がありません

たとえ、本人に自覚があって嘘をついている時でも、自覚があるのは話し始めの時だけです。その話を進めていくうちに、「これは嘘である」という自覚はどんどん薄れていき、しまいには完全に消えてしまいます。そして、「これは本当の話だ」という意識が本人の中に残るのです。

そのため、聞いている方も、はじめは嘘くさいと思っていても、そのうち本当の話に思えてきます。これは、「本当の話である」という自己暗示に、話している本人がかかっているために、話に妙な説得力が生まれるためなのです。

病気だった場合、進行すると周りの大切な人はもちろん、自分自身さえも傷つけてしまう恐れがあります。一人で解決しようと思ってもなかなか難しいと思いますので、嘘をつくことで悩んでいる場合は、専門的な治療やカウンセリングが必要です。メンタルクリニックや心療内科、精神科で気軽に相談してみて下さいね。

日常生活に潜む嘘
私たちが普段生活している中にもたくさんの嘘が潜んでいます。例えば、よくポストに入っているスーパーやドラッグストアのチラシ。
商品価格の末尾が90円や、99円になっているものをよく目にしませんか?
表記自体に嘘はないものの、これは私たちの心理をうまくついてきています。本当なら10円や1円しか変わりないのに、1000円と990円では印象がだいぶ違いますよね。

>>次ページ 嘘の活用法とプロに聞く「見破り方」