カサンドラ症候群

カサンドラ症候群

夫(妻)とコミュニケーションがうまくとれない、行動に疑問を感じることがある…。

もしかしたら、それは夫(妻)がアスペルガー症候群だからかもしれません。

今回は、アスペルガー症候群とも深い関わりのある「カサンドラ症候群」についてご紹介します。

カサンドラ症候群とは

カサンドラ症候群とは、配偶者や家族など、身近な人がアスペルガー症候群であることを原因として、情緒的な相互関係を築くことの難しさから、身体的・精神的症状が起こっているものを言います。

情緒的な相互関係とは、例えば、困っていることに気づいて助け合ったり、辛い時には慰め合ったり、家事や子育てを協力して一緒に行ったりすることです。

では、なぜ、相手がアスペルガー症候群だと、そういった関係を築くことが難しくなるのでしょうか?

アスペルガー症候群の人の特徴

カサンドラ症候群を説明するにあたって、アスペルガー症候群の説明は欠かせません。まず、アスペルガー症候群について少し触れておきましょう。

アスペルガー症候群発達障害のうちコミュニケーションに困難さを持つ自閉スペクトラム症に属するもので、生まれつき脳の一部の機能に障害があることから起こると言われています。

※アスペルガー症候群の診断について
アスペルガー症候群は、元々独立した診断名でしたが、2013年に改訂されたDSM-5(米国精神医学会が作成する、精神疾患や精神障害を分類したマニュアルの第5版)から自閉スペクトラム症に含まれることになり、新たに診断されることはなくなりました。ただし、本コラムでは、アスペルガー症候群と診断されてきた方が多いことや、状態像をつかみやすくするため、「アスペルガー症候群」の名称を用いています。

知的な発達には問題がないため、表面的な付き合いには問題がないことが多いです。しかし、冗談や比喩、また、私たちが生活の中で自然に身につけていくような社会の暗黙のルールがよく分からず、親しい友人関係を築けない、興味の対象が独特でこだわりが強いといった特徴があります。

悪気はないのですが、空気を読んだり、相手の気持ちに配慮するということができません。

親しい関係を築くことが難しいのは、夫婦関係でも同じですので、相手に気持ちを分かってもらえないことや、その都度説明しないと行動してくれないことなどが、配偶者にとっては大きなストレスになっていきます。

カサンドラ症候群の語源

話を一度、カサンドラ症候群に戻しましょう。

「カサンドラ」という言葉の語源は、ギリシア神話に出てくる王女の名前に由来しています。

カサンドラは、神であるアポローンに愛され、恋人になるかわりに予言能力を授かりました。しかし、その予言能力によって、アポローンの愛が冷めて自分を捨て去っていく未来を見てしまったのです。そのため、彼女はアポローンの愛を拒絶しました。ところが、それに憤慨したアポローンは、カサンドラの予言を誰も信じないようにと呪いをかけてしまうのです。

このギリシャ神話のカサンドラと似て、アスペルガー症候群を抱えた夫(妻)とのコミュニケーションに悩む人は、その苦しみを周りになかなか理解してもらえません

理解してもらうことのむずかしさ

アスペルガー症候群には、言語や知的な障害はないので、職場などでは、「あの人、何だか変わっているな」くらいの印象しか持たれないかもしれません。

一緒に生活して初めて分かることも多いので、例え相手の不満を口にしたとしても、周囲からは理解を得られにくいです。たとえ、周りに相談しても、「夫婦に悩みはつきものだからね」、「男(女)の人ってそんなものだよ」などと言われ、深刻さが伝わらないことが多く、一人で苦しい思いを抱えやすいのです。

また、困っている本人が「配偶者に対する不平はどんな夫婦にもあるだろう」と、誰にも苦しみを吐き出せないこともあるでしょう。

しかし、夫婦関係が、何だか上手くいかない、話し合っても相手が変わってくれない……そういった苦痛が積み重なると、身体的・精神的症状が表れることがあります。

カサンドラ症候群の原因や症状

カサンドラ症候群では、次のような症状が見られます。

  • 偏頭痛
  • 体重の著しい増加・減少
  • 不眠
  • 自己評価の低下
  • 抑うつ
  • 無気力、など

夫婦のどちらかが、継続的に夫婦生活がうまくいかないと思っていたり、苦痛を感じたりしている場合は、可能性の一つとして、配偶者がアスペルガー症候群であり、自分がカサンドラ症候群になっているのではないかということを考えてみましょう。

カサンドラ症候群の治療や対策は…?

カサンドラ症候群 アスペルガー症候群 専門家に相談しましょう

アスペルガー症候群であっても、診断されている人と、されていない人がいます。ケース別に見ていきましょう。

◆アスペルガー症候群と診断されている場合

まず、夫(妻)がすでに、アスペルガー症候群と診断されている場合です。

◇継続受診をしている場合…

もし、本人が継続的に病院を受診し、何らかの治療を受けているようであれば、あなたも一度同じ病院を受診してみてください

主治医は、夫(妻)について、専門家としての理解を持っています。パートナーとして、どのように本人と接したら良いのか、具体的なアドバイスをもらいましょう。また、あなた自身の不調についても伝えましょう。場合によっては、処方されたお薬を使いながら体調を整えていきます。

◇継続受診をしていない場合…

アスペルガー症候群と診断されていても、夫(妻)が現在、継続受診をしていない場合は、新たに信頼できそうな病院を受診してみてください。もし、夫(妻)が受診することを拒否しても、配偶者だけで受診することができます。

◆診断されていないが、疑いがある場合

夫(妻)がアスペルガー症候群と診断されたことがない、そもそも精神科や神経内科を受診したことがないという場合もあることでしょう。

このような場合、その人の性格にもよりますが、あなたに「病院に行ってきて」と言われたとして、すぐに同意し受診することはなかなかないかと思います。夫(妻)を無理に受診させようとするよりも、まずはあなた自身が受診して、相談してみましょう。

受診する時は、大人の発達障害を専門としている、あるいは夫婦関係の悩みを得意とする医療機関や、地域の発達障害者支援センターを探してみてください。夫(妻)が実際に診断を受けていなくても、相談することができます。

まずは、専門家にあなたの気持ちを伝えましょう。必要に応じて、薬物療法も受けられますので、体調を整え、どのように夫(妻)と接したら良いのかアドバイスをもらってください。心理カウンセリングを受けることも役立ちます。

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カサンドラ症候群になってしまう前に

夫(妻)がアスペルガー症候群かもしれないと気付けたり、診断が出たりした場合は、パートナーとどう関わっていけば良いか考えるためにも、自分がカサンドラ症候群にならないためにも、まずはアスペルガー症候群について知りましょう。

そして、「アスペルガー症候群の人が、夫婦の関係性をどのように捉えているのか」を理解することが大切です。

アスペルガー症候群の人の夫婦の捉え方

結婚前は、それなりにうまく付き合っていたけれど、結婚してから、または子どもが生まれてからストレスを感じるようになった…。こういったことはアスペルガー症候群の配偶者との間でよく起こります。

ここでは、2つのケースをご紹介します。

結婚後にアスペルガー症候群である夫(妻)の態度が急変した場合

結婚したことをきっかけに、これまで恋人(他者)と認識していた夫(妻)を、他者だと認識できなくなるため、配慮に欠けた態度や行動を取るようになることがあります。

結婚を「継続した恋人関係」という認識をしていた場合

子どもの誕生によって、夫婦の関係性が悪化してしまうことがあります。

アスペルガー症候群である夫(妻)は、結婚後も相手のことを「あくまでも恋人」とみなしやすいです。それは子どもが生まれても変わらないため、相手が子どもの母親(父親)であるということを認識できず、子どもの世話をする相手を見て、「自分の恋人が子どもに取られた」と思い込むことがあるのです。

そうすると、相手が子どもに愛情をかけるのを邪魔するなどの行動に出ることもあり、夫婦間に溝が生じてしまう原因になります。

男性に多いアスペルガー症候群

アスペルガー症候群は、女性よりも圧倒的に男性に多いとされています。そして、アスペルガー症候群の男性は、社会的な評価が伴わないとなかなか行動しないとも言われています。

そのため、周囲から評価されにくい子育てなどを行うことは難しく、それが原因で、パートナーが孤独を感じたり、その関係性に悩んだりすることも少なくないようです。

夫婦の関係を見つめ直すために

これまで夫婦関係に悩み、努力してもどうにも報われないという、真っ暗闇の中にいた方もいると思います。また、周りに話しても理解が得られず、どうせ分かってもらえないのだと、絶望されていた方もいるかもしれません。

アスペルガー症候群そのものの治療法はまだありませんが、カサンドラ症候群で表れた身体的・精神的症状を緩和したり、アスペルガー症候群の人が理解しやすい伝え方を知ることで、夫婦関係を改善していくことは不可能ではありません。

これからは、どうかお一人で抱え込むのではなく、信頼できる友人や親戚、専門家などと一緒に、緩和・解決への道を見つけていきましょう。また、同じ問題や悩みを抱えた人とつながることが出来る自助グループに参加して、自分の気持ちを話してみるのも良いでしょう。

あなた自身が夫婦関係をこれからどうしていきたいのかについて考えてみて、出来ることから少しずつ始めてみてくださいね。

夫婦以外でも…

今回のコラムでは主に夫婦関係について取り上げましたが、夫婦以外に、職場の同僚・上司と部下、親子や兄弟などの関係で見られることもあります。心当たりがあれば、お一人で抱え込まず、専門家に相談してみてください。