集団心理とは?その意味や集団心理のこわさについて心理学的に解説!

集団心理とは?その意味や集団心理のこわさについて心理学的に解説!

私たちは皆、大なり小なり日々人と関わって過ごしています。その中で学校、会社といった集団に属している方も多いのではないでしょうか。ここでは、集団心理について詳しく解説します。

集団心理とは?

集団心理とは、個人が集団に所属する一人となった時に生じる特殊な心理状態のことを言います。一般的に、個人が集団に所属すると、理性的思考が低下して、無批判な行動をしやすくなると言われています。

また、暗示を受けやすくなり、衝動的な行動を取りやすくなる傾向もあります。集団心理の他、群集心理と呼ばれることも多いです。

集団心理によって起こる騒動

1970年代に起こったオイルショックでは、トイレットペーパーなどを求めて、人々がパニックに陥りました。

また、記憶に新しいところでは、新型感染症の流行でマスクが品薄になり、人々がドラッグストアなどに押し寄せる事態となりました。こうした事態は、「集団心理」によって起こっていると考えられます。

集団心理を操作するのは簡単?

アメリカの心理学者であるミルグラムは、群衆心理について以下のような実験を行いました。

ニューヨークの繁華街で、サクラが舗道に立ち止まり、道路を隔てたビルの6階あたりを見上げます。そこで、サクラが何人くらいいると、通行人が同じようにビルを見上げるかを調べました。

その結果、サクラが一人でも40%の通行人がビルを見上げ、サクラが5人になると、実に80%近くの人がビルを見上げました。集団心理、と聞くとどうしても大人数をイメージしてしまいがちですが、たった数人でも影響力は大きいことがわかります。お店の販売率を上げるために、客のふりをしたサクラを置いているというケースはよくありますが、これは理にかなった方法と言えるでしょう。

集団心理、群集心理のもたらすこわさ

集団心理がもたらすこわさとは?

「三人寄れば文殊の知恵 」ということわざがあるように、一般的には個人で物事を考えるよりも何人かが集まった方が良いアイデアや意見が生まれるようなイメージがありますよね。そのため、企業ではさかんに企画会議などが行われています。

もちろんそれがメリットとなることも多いのですが、集団の方が個人より正しい方向性を持つとは限りません。時には、一致団結して誤った方向に進んでしまうこともあるでしょう。このような、集団になると非合理的な判断を下してしまうことを集団思考と言います。集団一人ひとりのメンバーが優秀であればあるほど、また団結力が強ければ強いほど、この集団思考に陥りやすくなると言われています。

異を唱えにくくなる不敗幻想

アメリカの心理学者、ジャニスは、集団思考においてもっとも大きく働く力を不敗幻想と呼んでいます。自分が属している集団にこそ力があり、だからこそ自身も一生懸命働いている、そのため、自身の属する集団が乗り越えられないことはない、というのが不敗幻想です。この不敗幻想が集団に広まると、たとえ疑問を持ったとしてもそれを主張しづらく、仮に勇気を持って反対意見を主張したとしても、集団の和を乱すとみなされ淘汰される傾向にあります。最悪の場合、いじめや集団暴行につながることもあるでしょう。

集団の中にいると責任感が薄れる!?

集団、特に他人同士で構成された集団に属すると一人ひとりの責任感が薄れることが知られています。仮に何か悪事をはたらいても誰もが皆、同じことをしているのだから、これは悪いことでないはずだ、と信じ込んでしまうのです。

人間には、元々多くの人の価値観にならっておけば間違いないと思い込んでしまう心理が働きやすいと言われています。例えば、集団で赤信号を渡ったり、未成年の集団が飲酒をしたりする行為がこれに当たるでしょう。

このように集団心理や集団思考にはデメリットがあることを理解した上で、会議などでは自由に意見を言い合える雰囲気づくりをしておくことが大事です。また、会議の時の進行役は、反対意見が出た時にそれをすぐ却下するのではなく、きちんと検討することも大切です。

集団に感染?集団ヒステリー

集団心理の中には、集団ヒステリー(集団妄想)と呼ばれるものがあります。これは、ある集団に属している個人がヒステリー症状を起こすことで、それが集団に属している他の人にも感染する現象を言います。例えば、同じクラスや同じ部署、宗教団体の信者間などで、一人が興奮状態に陥ると、それが他の人にもうつり、失神症状などを起こすケースもあります。

また、一般的に宗教が生活に深く入り込んでいる場合、閉鎖的で排他的な傾向が強まると言われています。その原因は、集団内での規律が自分にとっての生活の全てとなり、社会通念からどんどん離れていくことにあるようです。催眠にかかりやすい状態のことを被暗示性と言いますが、この被暗示性が極度に高くなると、集団ヒステリーが起こりやすくなります

生きていく上で集団は避けられない

私たちが生きていく中で集団に属することは多々あります。集団心理について理解し、お互いが一人ひとりの良い部分を認めて、尊重していくことが必要になるでしょう。集団心理についてもっと知りたいという方は、映画『ミスト』『十二人の怒れる男』がおすすめです。難しい学術書はちょっと…という方でも、具体的なイメージが広がりやすくなりますよ。

参考
ミスト (字幕版)を観る | Prime Video
十二人の怒れる男 (日本語字幕版)を観る | Prime Video