言い訳をしてしまう心理~セルフハンディキャッピングって?

言い訳をしてしまう心理とは

自分にとって都合が悪くなった時、何かに失敗した時、相手を怒らせまいとする時、私たちがついしてしまうのが「言い訳」。では、人はなぜ、言い訳をしてしまうのでしょうか。

今回は、言い訳をしてしまう心理についてご紹介していきたいと思います。

大事な日の前なのに、なぜか別の行動がしたくなる!?

学校の試験前に、「さぁ、勉強をするぞ!」と意気込んだものの、部屋の汚さが気になって掃除を始めてしまい、なかなか勉強に取り掛かれなかった…。あなたには、こんな経験はありませんか?


あるいは、試験前日は早めに寝た方が良いと分かっているのに遅くまで勉強していて、翌朝、友達に「睡眠時間が短かったから、頭の回転がイマイチかも」と言ってみたり…。

これらの行動は、心理学用語で「セルフハンディキャッピング」と呼ばれています。これは、言葉の通り、自分で自分にハンディキャップを課してしまうことを表します。

これらの言動には、迫ってくる試験に対する不安や、自信のなさが隠れています。そして、実際に試験結果が悪かった場合には、「掃除をしていて、あまり勉強できなかったから」「睡眠不足だったから」と言い訳をすることで、「仕方がなかったんだ」と自分自身を納得させようとするのです。

テスト前、わざとの「寝不足」はセルフ・ハンディキャッピング?

セルフハンディキャッピングは、どんな時に起こるの?

心理学者のバーグラスとジョーンズは、セルフハンディキャッピングを裏付けるための、こんな実験を行いました。

まず、学生を集め、2つのグループに分けます。「知的作業に影響する薬の効果を検討する」と嘘の説明をし、薬を飲む前後で課題に取り組んでもらいました。

薬を飲む前、一方のグループには正答のある問題を、もう一方のグループには正答のない問題が割り当てられました。問題を解いた後には、解答の正誤に関わらず、全員に20問中16問正答だったと伝えられました。

この時、正答のない問題を解いたグループの人達は、得点が高くても、正解している確信がなかったわけですから、自信が持ちづらい状況にあったと仮定されるでしょう。

そして、この後、再度同じような課題に取り組んでもらいました。その際、知的作業を促進する薬と妨害する薬の2種類(両方とも偽薬で、実際にその効果はありません)から、いずれかを選択してもらい、服薬してもらいました。

すると、正答のある問題を解いた人は、「知的作業を促進する薬」を選んだ人が多かったのに対し、正答のない問題に取り組んでいたグループの学生は、「知的作業を妨害する薬」を選ぶ人が圧倒的に多かったのです。

この結果から、例え高い評価を受けても本人に自信がなかった場合は、「○○だったから仕方がない」と、予防線を張りたくなるということが分かりました。

つまり、自分の能力に自信がない時や、取り組む課題に対して成功するイメージが浮かばない時に、セルフハンディキャッピングが起こりやすいということです。

この実験の場合、正答のない問題に取り組んでいたグループの学生が、仮に問題を解くのに失敗した時、「自分の実力が及ばなかったわけではなくて、知的作業を妨害する薬を飲んだからだ」と、本人も知らず知らずのうちに、自分自身のイメージが良くなるような行動を取っていることが分かります。

言い訳は自己防衛反応の一つでもある

私たちは物事がうまくいかなかった時に、傷ついたり、落ち込んでしまわないように、自分を守るための言い訳をします。

これは、自己防衛反応(防衛機制)の一つだと考えることができます。先ほどご紹介したセルフハンディキャッピングも自己防衛反応です。自己防衛反応は誰にでも表れるもので、一般的には無意識のうちに行っています。

自己防衛反応から起こる言い訳はいくつかのタイプに分かれています。主なものをご紹介しましょう。

1.合理化
都合の良い、もっともらしい理由をつけて自分自身を正当化すること。

例:試験に失敗した時に、本当は勉強不足が原因なのにも関わらず「風邪気味だったから仕方がない」と考える。

2.抑圧
自分の欠点やミスだと気付いていながら、そこから目を背け、気づいていないかのように自分自身を抑え込んでしまうこと。

例:自分がワガママなのが原因で、友達を怒らせたのに「相手の虫の居所が悪かったんだ」など、別のことに原因を求める。

3.投影
自分の中にある感情を認めたくなくて、あたかも相手がその感情を抱いているかのように考えを押しつけてしまうこと。

例:自分が浮気をして恋人と別れたのに、「恋人の気の多さに耐えられなくて、別れることになったんだ」と相手に原因があるように考える。

「それは言い訳でしょ」と指摘されたら…

自分では無意識にしている言い訳でも、周りの人から見ると「ごまかそうとしている」「苦しい言い訳だな」と思われ、指摘されることがあります。

自分にとっては無意識ですから、指摘された瞬間にカチンときて怒りながら言い返してしまったり、「でもそれは…」と、言い訳に言い訳を重ねてしまったりすることもあるでしょう。しかし、これらのよくやってしまいがちな行動は、極力避けるようにしましょう!

言い訳は、誰にでも表れる正常な心理作用ですし、健全な精神を保つためにも必要不可欠な行為です。ただ、それがいきすぎると周りに不信感を与えてしまうからです。

もし、言い訳をして、それを指摘された時には、ひと呼吸置いて、自分で言い訳をしていなかったかどうか振り返ってみて。そして、認めることが出来るなら、素直に謝ることが大切です。

あなたの謙虚さが相手に伝わり、人間関係が円満になるでしょうし、自己理解の助けとなるでしょう。言いわけをするのは人として当然のこと。言い訳したくなった時、言い訳してしまった時は、自分と向き合うチャンスにしてみてください。