マーケティングといえば、どちらかといえば経営学であったり経済学が近いと思われるかも知れませんが、マーケティングと心理学は密接に関わっているんです。今回は、マーケティングに活かせる心理学について、それぞれの初心者の方向けに分かりやすくご紹介していきます。
マーケティングによく活用される心理効果9選!
それでは早速、マーケティングによく活用されている心理学について見ていきましょう!
カリギュラ効果
カリギュラ効果とは、禁止されるとその行為をしたくなってしまう心理効果のことを言います。
例えば、ネット広告などで「本気で痩せたい人以外は見ないでください」というキャッチコピーが掲載されているのも、「禁止」を使った戦略です。
また、禁止以外にも、通販などで「いつまでもキレイでいたい人限定」などの言い回しが使われているのもカリギュラ効果を活用した販売戦略と言えるでしょう。
人は、禁止だけでなく、限定にも同じような心理が働くのです。それ以外にも「完全予約制」や「年末までのスペシャル価格」などのキャッチコピーにも人は惹きつけられやすいとされています。
その広告を見ている人に対して特別な感じを出すことで、その商品やサービスに付加価値をつけ、消費者の購買意欲をあおっているのです。
禁止や制限を使うのは確かに効果的ではありますが、あまりにそのハードルを高くしすぎると、逆に消費者の購買意欲は下がってしまうので注意が必要です。
ハロー効果
ハロー効果とは、後光効果、光背効果とも言い、人を評価する際に、その人についての印象やその人がもっている肩書きや職業などの特徴によって、その評価が変わってしまうことを言います。
例えばマーケティングでは、CMに好感度の高い芸能人を起用することによって、紹介する商品やサービスをよりよく見せようとするケースなどが挙げられます。
それ以外に口コミにもハロー効果は活用されています。例えば、商品やお店にたくさんの好意的な口コミが寄せられている場合、人は「きっとこの商品(お店)はいいものに違いない」と思いやすくなります。
反対に悪い口コミがたくさん掲載されていれば、その商品やお店は評価されにくくなります。一時期ヤラセの口コミを多数掲載していた企業がニュースで取り上げられていましたが、それだけ口コミは人が商品やサービスを評価する際に重要だということがわかりますね。
それ以外にも企業の価値を高めるために行われているブランディング戦略など、マーケティングにおいてハロー効果は広く活用されています。
以下の記事では、ハロー効果について詳しく解説しています。
ウィンザー効果
ウィンザー効果とは、直接本人に噂や情報を伝えるよりも第三者を通じた方が、影響が大きいという心理効果を言います。マーケティングでは、口コミやレビューなどでよく応用されています。
例えば、自社ホームページでいくら自社の商品やサービスのほめ言葉を書き連ねても、あまりにも当たり前過ぎて信憑性がないですよね。
それでは、第三者が、「この商品(サービス)は素晴らしい」と書いていたらどうでしょうか。その数が多ければ多いほど、あなたはその商品(サービス)を利用してみたくなるのではないでしょうか。
また、自社サイトに口コミを掲載させる際には、あえて悪い口コミも掲載することで、その情報の信憑性を高めるということもあるようです。活用法としては、ハロー効果と似ているところがあるかもしれませんね。
バーナム効果
バーナム効果とは、たとえどんな人にも当てはまる事柄だったとしても、それを本人に語りかけることで、その人が信じてしまうような心理効果のことを言います。
例えば、よく挙げられるのが占いです。多くの人に当てはまるようなことを占い師から言われた時でも、人は、まるで自分のことを言い当てられているような錯覚に陥ります。
バーナム効果を活用したマーケティングとしては、「多くの人に当てはまるであろう」広告文で見る側に訴えるという手法があります。
ただし、見る側に「多くの人に当てはまる」と思われてしまっては効果がありません。例えば、「毎日肩こりでお悩みのあなたにおすすめ」ではなく、「あなたのつらい肩こりは、肩甲骨が原因かも?」のように、内容をより具体的に絞り込みます。
それにより、見る側が「自分の事かも?」と錯覚(自己認知バイアス)してくれるのです。「あなた」という文言も、個人を特定するという意味で効果を発揮します。
また、一つでなく幾つも語りかけることで(「寝る前に毎日、スマホを眺めてしまっていませんか?」など)、さらにターゲットが絞られるので、消費者が「自分に当てはまる!」と思いやすくなります。
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テンション・リダクション効果
テンション・リダクション効果とは、注意力が散漫になると警戒心が弱くなるという心理効果を言います。「テンション」は精神的な緊張、リダクションは減少を指しています。
例えば、ネットショッピングをしていて、さんざん悩んだ商品をカートに入れたあとに、「あなたにおすすめの商品はこちら」「関連する商品はこちら」など複数の商品画像が表示されて思わず、「これも!」と購入してしまったことはありませんか?
これこそがテンション・リダクション効果を利用したオーソドックスなマーケティング手法と言えるでしょう。緊張の糸がほどけた時に、人は注意散漫になりやすくなります。その結果、あとから考えると不必要なものでも買ってしまうという現象が起こるのです。
ザイオンス(単純接触)効果
ザイオンス効果は、単純接触効果とも言われ、特定の人物や物に何回も接触することで、評価や好感度が高まる効果を言います。例えば、TVCMなどでは、一定期間の間、同じCMが何度も放送されますよね。
そうすると、それを見ている人はそのCMが紹介している商品やサービスに興味を持ちやすくなります。ただし、同じ番組内で、何度も同じCMを放送した場合は、「なんだ、またか」と視聴者を飽きさせてしまうこともあるので注意が必要です。
また、その時は特別意識していなくてもスーパーやコンビニなどで、なんとなくCMで見かけた商品を手に取ってしまうという場合も、この効果が働いていると言えます。
この広告、また表示されている?
あるサイトを訪れたあとで、別のサイトを見ている時に以前訪れたサイトのサービスや商品が広告として表示されるということがありませんか?
これは、リマーケティング広告(もしくはリターゲティング)と言われており、いちどお訪問してくれた見込み客に対して繰り返しアピールすることで、接触回数を増やす為に活用されます。これもザイオンス効果を狙ったものだと言えるでしょう。
アンカリング効果
アンカリング効果とは、最初に人に情報を提示すると、その人のその後の意志決定にもそれが作用するような効果のことを言います。
例えば、あなたが1冊800円のノートを見つけたとします。どう思いますか?多くの人が高いと思うのではないでしょうか。
人は、基準となるものを皆それぞれ持っています。アンカリングとは、船がいったん錨(アンカー)を下ろすと、そこから動きにくくなることを表しています。
マーケティングにおいては、通販などのサイトで、このアンカリング効果が活用されています。例えば、定価10,000円と書かれた商品があります。値段のところには打ち消し線が引かれており、その下には5,000円の文字。
誰しもが「これはお得だ」と思うのではないでしょうか。
また、このような表示を見てしまうと人は「安くなった」ことに価値を見いだし、購買意欲がそそられます。本当は元々の値段がもっと安くて良い商品があるかもしれないのに、こちらの方を手に取ってしまいやすくなるのです。
アンカリング効果はとても強力なので、上記のような手法(二重価格表示)については、景品表示法上の規制(※)が適用されます。
(※)8週間ルール…セール表示をするには、定価で8週間以上販売している必要がある等
コンコルド効果
コンコルド効果とは、このまま続けたら損失になることはわかっているのに、それまでの損失を考えてついついその行為を続けてしまう心理効果を言います。
心理学だけでなく経済学でもよく使われている用語で、別名、「サンクコストバイアス」とも言われています。
先入観から人の判断が歪むことを「認知バイアス」と言いますが、コンコルド効果もその一種です。例えば、あなたが肩こりがひどく、毎月のように整形外科でリハビリを受けているとしましょう。
数ヶ月通っても一向に肩こりはよくなりません。それでも、あなたはそれまで病院につぎこんできた費用が無駄になったと思うのが嫌で、もしかしたらもうすぐ治るかもしれないと自分に言い聞かせて、病院に通い続けます。これも一種のコンコルド効果が発揮されていると言えるでしょう。
課金ゲームなどで、このコンコルド効果は活用されています。ユーザーがたとえ、そのゲームに飽きてきたとしても、今まで購入したアイテムを考えるとやめるにやめられなくなり、そうして、また課金してしまう…という事態に陥りやすくなります。
コンコルド効果について知っておくことで、自分がそのような状況に陥った時でも、ふと我に返りやすくなるかもしれません。時にはやめる勇気というのも大切なのかもしれませんね。
シャルパンティエ効果
シャルパンティエ効果とは、イメージによってそのものの判断が変わってしまう錯覚のことを言います。元々は重さの観点で使われる用語でしたが、今では、様々な場面でシャルパンティエ効果が使われています。
有名な例を挙げてみましょう。例えば、「レモン100個分のビタミンC配合」と「ビタミンC 2000mg配合」だったら、皆さんはどちらのキャッチコピーに興味を引かれますか?
実際はどちらも同じ量なのですが、ビタミンC 2000mgよりもレモン100個分の方がイメージしやすく、手に取りやすいのではないでしょうか?また、お店に行くと、「298円」「999円」など、半端な価格が目につきます。これもこの効果を利用したものです。
「300円」「1000円」と書かれているよりお得感があるように人は感じてしまうのです。それ以外にも価格を小さく設定して安いような錯覚を起こさせるものがあります。
例えば、スポーツジムの年会費が120,000円だとします。これだと「高い」という印象がぬぐえません。それでは、月会費10,000円だったら?それでもやっぱりまだ高く感じるかもしれません。
では、会費が1日あたり322円と言われたらどうでしょうか?最初の金額よりもかなり安く感じるのではないでしょうか。実際は、同じ金額なのにもかかわらず、私たちは安いように錯覚してしまうのです。
まとめ
今回は、マーケティングと関連の深い心理学についてご紹介しました。
マーケティングに活用されている心理学について学ぶことは、仕事でマーケティングに携わる方が実践できることはもちろん、消費者側としても役に立ちます。
広告を目にした際に、「◯◯効果を使っているな」と分かると面白いですよね。
本当に自分に必要な商品やサービスを見抜ける目が養われるかと思いますので、ぜひ知識として覚えておいてくださいね。