私たちは、人を判断する時、個人の価値観を基にして相手を見ています。しかし、その価値観は何かの拍子にコロッと変わってしまうことがあるかもしれません。今回は、人の価値観を揺るがす「ハロー効果」について詳しくご紹介します。
ハロー効果とは?
ハロー効果とは、ある特定の人物を評価する時に外見や職業などのイメージに引きずられて、相手への認識が変わってしまうことを言います。アメリカの心理学者エドワード・ソーンダイクによって提唱されました。ハロー効果の「ハロー」は、後光(=神仏の体から放射される光)のことを意味しています。そのため、後光効果、光背効果とも呼ばれています。もちろんここで言うハロー効果は人間のこと。人間の後光としては、外見、職業、身体的特徴、家柄、交友関係などが挙げられます。これらが、他の人よりも優れていると人から判断された場合、優位な印象を持たれる傾向があります。
背が高いと給料も高くなる?
例としてここでは、身長のハロー効果を挙げて説明していきましょう。ピッツバーグ大学の研究で卒業生を調べたところ、身長が185~190㎝の人は、それ以下の身長の人よりも平均で12%ほど高い初任給をもらっていたとの結果が出ました。また。就職の選考では、ほとんど能力の変わらない二人の男性のどちらかを選ぶ場合、背の高い方が採用される傾向にあったそうです。逆に、同じ身長なのにもかかわらず、医師や教授と紹介された人の方がそれ以外の人よりも背が高く見られたという実験結果も出ています。
やっぱり美人は得?
ここでもう一つ実験を紹介しましょう。アメリカの心理学者であるシンガーは、40人の大学教授に192人の女子学生の写真を見せて、一人ひとりの外見的な魅力について判断してもらいました。その結果、魅力があると判断された学生は成績も良いことがわかったのです。これは、外見的に魅力のあった学生がたまたま成績が良かったわけではありません。「魅力のある容姿」という外見的な特徴がハロー効果となり、教授の成績の評価までもを変えていたのです。
様々な場面で見られるハロー効果
ハロー効果は様々な場面で見られます。例えば、恋愛において、容姿が優れている人を恋人にしたいと思うのもハロー効果を期待しているからと言えるでしょう。たとえ自分自身が後光となるような特徴を持ち合わせていなくても、容姿の優れている恋人を誰かに見せたり、連れて歩いたりすることで恋人が後光としての存在をはたし、自分自身も人から高い評価を得ることが可能となります。また、会社で会議を行う場合、同じような内容を発言していたとしても、発言者によって人がもつ印象は変わってきます。もちろん、話し方が上手い、下手というのもありますが、優秀と判断されている人や地位が高い人の話には皆、積極的に耳を傾けようとします。
マーケティング戦略にも使われるハロー効果
他にもハロー効果を狙ったものとして、CMに好感度の高い芸能人を起用することによって、紹介する商品やサービスをよりよく見せようとするケースなどが挙げられます。口コミ(第三者評価によるハロー効果)の掲載や、企業の価値を高めるために行われているブランディング戦略など、マーケティングにおいてもハロー効果は広く活用されています。
ハロー効果に似た心理効果
ハロー効果は、他人を評価したり判断したりする時に生じやすい歪みです。こうした歪みは、ハロー効果以外にもあります。それが「寛大効果」と呼ばれるものです。これは、人の良い部分は過大評価し、反対に悪い部分は過小評価しやすい傾向にあるというものです。例えば、依存症の一種であるDV(ドメスティックバイオレンス)では、恋人の暴力から逃れたい気持ちがあるのにもかかわらず、別れられない人が多くいます。これは「暴力をふるうことはあっても本来は優しい人だから」という気持ちがあるからです。この「優しい」の部分が強調されて、ついつい暴力を許してしまうのです。寛大効果は一見、人の良い側面を見られる良いもののようにも思えますが、対人認知力を歪める効果でもあるので、現実が見えなくなる恐れがある危険なものでもあります。
何か一つでも外見を磨こう
「人間、中身が一番大切」とはよく言われますが、じっくり付き合ってみないと中身を知ることはできませんよね。
初対面の時などは特にそうですが、人は少なからず、外見で相手を判断しています。逆に言えば、上手くハロー効果を取り入れることができれば、自分自身をよりよく見せるための効果的な方法にもなりえます。例えば、身だしなみを整えるだけでも、きちんとした印象を人に与えることができます。変えようのないものは仕方ないですが、努力で変えられるものは積極的に変えていきましょう。何もかもを完璧にしようとする必要はありません。何か一つが優れているだけでも、ハロー効果は生まれると考えられています。「ここは!」と思うようなところを磨いていけると良いですね。