もしかしたら、何となく使っている人も多いのでは?今回は「コンプレックスとは何か」について掘り下げていきたいと思います。
そもそもコンプレックスの意味って?
「コンプレックス」という言葉を使う時、多くの人が「自分の嫌いな部分」や「劣っていると思う部分」という意味で使っていると思います。
ただ、英語本来のコンプレックスには、「複合の・合成の・複雑な」という全然違う意味があります。では、なぜ私たちは、「自分の嫌いな部分」という言葉を言い表す時に「コンプレックス」という言葉を使うようになったのでしょうか。
コンプレックスという概念を突き止めたのは、心理学者のユングで、本来は、「複雑な気持ちの集まり」という意味を示す言葉でした。ユングの唱えるコンプレックスは、決して、マイナスの言葉ではなかったのです。
しかし、同じく心理学者であるアドラーは、「コンプレックスは劣等感を起こさせるもの」だと解釈しました。
アドラーは、劣等感が原因で起こる、自分をよく見せようとしたり、失敗して傷つくのを恐れたりする心のわだかまりのことを「劣等コンプレックス」と表現しています。このことから、コンプレックス=劣等感というイメージが定着したのだと考えられています。
また、精神医学者であり精神科医であるフロイトは、「コンプレックスとは不快感や嫌悪感を招くため、無意識に抑圧されたものである」と説いています。
こうやって見てみると、実はコンプレックスにはいろいろな意味があることが分かりますね。
コンプレックスを生かせる人、生かせない人
容姿、学歴、運動神経、財力、育ってきた環境など、コンプレックスは人それぞれですよね。
では、コンプレックスを持った時、人はどうするでしょうか。自分の考える弱点を補うために、いろいろなことを考え、工夫し、コンプレックスを克服する人もいるでしょう。
例えば、野口英世は、幼い頃、左手に大やけどを負い、障害が残りました。
周りにからかわれたりもしていて、いつも火傷の手を隠すようにしていたようです。そんな英世は、左手の手術により医学の素晴らしさを実感し、自身も細菌学の研究に没頭しました。
このように、コンプレックスをカバーしようと努力を重ねることを心理学では「補償行動」と呼びます。
ただ、自分のコンプレックスと向き合うのは大変なことです。中には、自分のコンプレックスと向き合うことができずに、隠そうとしたり、別の問題にすり替えてしまう人もいます。
例えば、車の運転の下手な人が、「車の排気ガスは環境によくないし、人がますます動かなくなるから車には乗らない」と主張したり、機械オンチで携帯電話を使いこなせない人が、「メールばかりしているから、コミュニケーション能力が低下するんだ」と文句を言うといった具合です。
これは、「優越コンプレックス」というコンプレックスの裏返しにあたります。高飛車に出ることで、自分のコンプレックスを隠そうとしているのです。この優越コンプレックスという概念もアドラーが提唱しました。
この優越コンプレックスの考え方がクセになると、自分自身が成長できないだけでなく、周りからも見ても偏屈な印象を与え、人間関係がぎくしゃくしてしまう可能性があります。
コンプレックスはあっていい
「コンプレックスが全くない」という人は、きっといないのではないかと思います。
ただ、コンプレックスを気にし過ぎて、自分の良いところを見逃してしまっていたり、もしかしたら自分でその良い部分をつぶしてしまっていることもあるかもしれません。
それではもったいないので、意識的に自分の長所に目を向け、それを前面に押し出していきましょう。
また、自分のコンプレックスから目を背けずに、認めることも大切です。コンプレックスがあることで、人はそれを奮発材料として努力することができます。
背が低い、足が短いなどの身体的なコンプレックスを持っている場合は、努力のしようがないかもしれません。でも、他のことで、自分を磨き、それを表に出していけば、十分魅力的に映るはずです。
例えば、笑顔、普段の立ち振る舞い、コミュニケーション能力、仕事のスキルなどなど…。
コンプレックスという概念を突き止めたユングは、「なぜコンプレックスを感じるのかを考えることで、自分でも気付いていないような自分の心の内を知る手助けになる」と言っています。
自分に少しでも自信が持てるようになれば、心に余裕も生まれます。余裕が生まれると、以前は気付けなかった周りのことを見渡すことが出来るようになったり、自身の表情や気持ちまでもがきっと変わってくるはずです。その結果、人間関係も円滑になるかもしれません。
皆さんも、コンプレックスとの付き合い方について、ぜひ考えてみてくださいね。
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