引きこもりはなぜ起こる?~その心理や対応~

一日のほとんどを自室や自宅で過ごし、社会との関わりを避けている状態を「引きこもり」と言います。

ケガなどがあるわけでもないのに、家から出られないのはどうしてなのでしょうか?

今回は引きこもりになってしまう原因や、当事者の心理、引きこもりへの対応について探っていきます。

引きこもりはなぜ起こる?

引きこもりってどんな状態のことを言うの?

国の定義では、「仕事や学校などの社会参加を避け、家にこもる状態が半年以上続くこと」を引きこもりとしています。

その中で、精神的な疾患はないのにも関わらず、家に引きこもってしまう状態を「社会的引きこもり」と言い、現在では、引きこもりと言うと、社会的引きこもりを指すことも多くなっています。

内閣府による調査によれば、15~39歳の引きこもりの人は、全国に推計約54万1000人いるとされています。また、引きこもりの長期化や、高齢化も問題となっています。

参考内閣府『若者の生活に関する調査報告書』2016年

<引きこもりと高齢化>

内閣府は、今年3月に40~64歳の引きこもりの人が全国に61万3000人いるとの推計を発表しました。先ほどの15~39歳の引きこもりの人とあわせると全国に100万人以上引きこもりの人がいることになります。

引きこもりが長期化した場合、40代や50代の引きこもりの人を70代や80代の親が支えなくてはならず、問題が深刻化していきます。この現象は、「7040問題」「8050問題」と呼ばれています。

20年間の引きこもりから、事件をきっかけに社会生活を取り戻した男性の例
2019年6月16日(日)付の朝日新聞では、大学中退後に約20年間自宅に引きこもっていたという男性が取り上げられていました。川崎市の20人殺傷事件のニュースを見て、容疑者が引きこもり傾向にあったことを知り、「容疑者と重なる部分を感じた」と言います。それと同時に、今は親の年金で暮らしているけれど、親が死んだら自分はどうなるんだろう…と不安を覚えたそうです。

後日男性は、ネット検索で見つけた40~50代の引きこもりの人と家族を支援する「市民の会 エスポワール京都」に足を運び、そこで同じ引きこもりの当事者と話したり、相談したりすることで、笑顔を取り戻せたそうです。

この男性のように身近な人だけでなく、本人も気づきを得て、今の状態から一歩踏み出す勇気が持てると、状況も少し変わってくるかもしれませんね。

精神科医である斎藤環氏は、社会的引きこもりを「20代後半までに問題化し、6カ月以上、自宅に引きこもって社会参加をしない状態が持続しており、他の精神障害が第一の原因として考えにくいもの」と定義しています。

もちろん、人によって引きこもりの程度は様々です。家の中では自由に動き回って、家族と話したり家事を行ったりする人もいれば、一切自室から出ず、家族とも話さないという人もいます。また、メールや電話などで友達と話すことは出来るという人もいます。

引きこもりになりやすい人の特徴

引きこもりになりやすい人の特徴として以下のことが考えられています。

  • 完璧主義の傾向がある
  • プライドが高い
  • 理屈っぽく、執念深い
  • いじめられたことがあるなど、過去に何らかのトラウマがある
  • 人とコミュニケーションを取ることが苦手
  • 引きこもる以前は真面目で、学校の成績も良かった

他にも、不登校が長引いて、その結果、そのまま引きこもり生活に陥ってしまう、というケースもあるようです。

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引きこもりの過半数は働いたことがある!?

引きこもりの6割前後には就労経験があると言われています。

実際、内閣府のある白書によると、引きこもりになったきっかけとして、「職場になじめなかった」という回答が、「病気」という回答と並んで一番多くなっています。

参考内閣府 「第2節 若年無業者,フリーター,ひきこもり|平成27年版子ども・若者白書(全体版) – 内閣府」

引きこもっている人の中には、働いている時にパワハラを受けたり、過度の残業を強いられた人も少なくはありません。その結果、働くことに対して強い恐怖感や不安感を持ってしまう場合もあります。

まわりから見て、引きこもりの人は、一見すると楽しているように見えるかもしれません。しかし、引きこもりの当事者は、自分が働いていないことに対して、負い目を感じていることがほとんどです。また社会と関わりたいのに、働くことができない自分を責めていることもあります。

決して引きこもりの状態を楽しんでいるわけではないのです。外に出たい、働きたいとは思いつつも、どうしたら良いのか分からない、また、外に出ることで再び傷つくことを恐れている場合もあります。

このように、働かないのではなく、働きたくても外に出られず苦しんでいる人も多いのです。

家族が引きこもっている場合の接し方は?

一般的に、引きこもり期間が長くなるにつれて、家族と会話しなくなったり、ゲームやパソコン、テレビに向かうことが多くなります。また、親が理解を示さないことで、大声で騒ぐ、壁を叩く、窓を割るなどの家庭内暴力が見られることもあります。

そして、引きこもりの期間が長引けば長引くほど、自力での社会復帰はおろか、家族による問題解決も難しくなってしまいます。

そうならないためにも、早めに家族が支援していくことが大切です。

社会的引きこもりは、一見無気力で、ただ怠けているだけのようにも見えますが、実際はそうではありません。

引きこもりは、何らかの理由で元気や自信がなくなっている状態です。本人は、自尊心が傷ついた状態であり、強い劣等感や挫折感を覚えていることも多いのです。

引きこもりの心理

ですので、「早く働きなさい」「外に出なさい」「何、怠けてるの」などの言葉は本人を追い詰めることになります。引きこもっていることを責めたり、叱ったりするのは逆効果です。よい雰囲気づくりを心がけてください。

例えば、「あいさつを欠かさず行う」「雑談を試みる」「一緒にテレビを観る」など、家族のだんらんを少しずつ増やしていくと良いでしょう。頻繁に声をかけることで、引きこもっている本人も自分は見捨てられていないのだと安心することが出来ます。

その結果、引きこもっている本人の悩みを聞くことが出来たり、問題に対して本人と共に考えることが出来るようになる場合もあります。

<引きこもりと暴力の関係は?>

先日、元農林水産事務次官の熊沢英昭さん(76)が長男の英一郎さん(44)を刺殺するという事件がありました。この事件の動機の1つには家庭内暴力があったことが明らかになっています。長男は、14歳から自宅で引きこもり、母親に暴力をふるっていたそうです。

このように、ストレスや引きこもりなどが引き金となって、家庭内暴力が起こることがあります。その背景には、家族が引きこもっている本人を責めることが挙げられると、精神科医の斎藤環氏は述べています。

本人を怠け者扱いしたり、早く仕事をするようにせっつくと、引きこもっている人は、それに反発して暴力をふるうということがままあります。しかし、責めることをやめるだけで、家庭内暴力がおさまったというケースは多くあるそうです。家族などの身近な方は、本人を追い詰めるようなことをしていないか、一度振り返ってみることも大切かもしれません。

理解を深めるために…

全国で引きこもりについての、家族会や講演会などが行われています。また、青少年のストレスについて学べる資格などもあります。

参考家族会連合会

資格青少年ケアストレスカウンセラー

まずは、家族がそれらに参加したり、勉強したりして、知識を深めるのも良いでしょう。また、当事者同士が、自助グループ(共通の問題や悩みを抱えた人が集まり、自主的に運営しているグループ)などに参加して悩みや不安を話し合いながら、解決策を見出していくピアカウンセリングという方法もあります。

精神保健福祉センターなどの公的機関では、引きこもりの方のためのカウンセリングを行っているところもあります。そういったところに一度問い合わせてみるのも良いのではないかと思います。

家族でサポートする際は、決して焦らないことが大切です。仕事を見つけてくるなど、いきなり社会との関わりを持たせようとするのではなく、部屋から出られないのであれば、出られるようにする、家の中にしかいられないのなら、近くのコンビニまで行けるようにするなど、小さな目標を設定して、それをクリアしていくようにしましょう。

長い目で見守っていくようにしてくださいね。