公認心理師

公認心理師は、心理職の唯一の国家資格(名称独占資格)です。

2017年公認心理師法の全面施行により定められ、保険医療、福祉、教育、産業などの分野で、支援を求める人やその関係者の相談に応じ、助言、指導、そのほかの援助を行います。

また、広く一般の人達に対して心の健康に関する知識の普及を図るための教育や情報の提供を行うことも公認心理師の業務として定められています。

大学院卒が前提となる臨床心理士と異なり、実務経験があれば大学卒で受験資格が得られる点や、資格の更新制度が設けられていません。

公認心理師とは?

心の悩みを抱え、支援を必要としている人に、専門的な知識や技術をもって、相談に応じます。また、支援を必要としている人の家族や関係者に対してもサポートを行います。

活躍の場は、病院、社会福祉施設、学校など、様々です。今後、新たに活躍の場が増えるとも言われています。

第1回試験(2018年9月9日実施)は、受験者数35,020人、合格者数27,876人、合格率は79.6%でした。また、北海道胆振東部地震への措置としておこなわれた追加試験(12月16日実施)では、受験者数1,083人、合格者数698人、合格率64.5%でした。

第2回試験(2019年8月4日実施)は、受験者数16,949人、合格者数7,864人、合格率は46.4%でした。

参考第1回公認心理師試験 合格発表について|厚生労働省
第2回公認心理師試験 合格発表について|厚生労働省
第3回公認心理師試験 合格発表について|厚生労働省
第4回公認心理師試験 合格発表について|厚生労働省
第5回公認心理師試験 合格発表について|厚生労働省

公認心理師の仕事の内容

悩みを抱えている人の相談に応じて、相談者が自分自身のことを知り、自分なりの決定ができるようにサポートをします。また、相談者に関わる人に対しても、相談者本人への関わり方のアドバイス、情報提供を行うなど、連携を行います。そして、直接の支援を必要としていない方に対しても、心の健康についての情報提供を行います。

公認心理師になるには

国家試験受験資格を得たのちに、試験の合格が必要です。受験資格は、4年生大学と大学院において定められた科目を履修した者4年制大学で定められた科目を履修したのちに2年以上定められた施設での実務経験がある者が基本となります。それ以外に、施行以前に心理学系大学院を修了した者に対して単位の置き換え措置が行われたり、実務経験5年以上の現任者に対し2022年までは経過措置が取られるなど、8つの区分があります。

公認心理師の受験資格取得(全8ルート)

出典:厚生労働省 受験資格取得方法

公認心理師の資格

通信/通学

現在のところ、公認心理師のカリキュラムをもつ通信制の大学院はありません。必要な実習時間が450時間以上になるため、通信制で行うことが難しいためです。ただし、一部の過程を通信教育で取得可能な大学もあります。

通信制での受験を考えている人も、現段階では、大学は通信制を卒業し、大学院は通信制以外を選ぶことになるでしょう。

◆公認心理師資格に対応している主な通信課程の大学(2022年9月現在)
・放送大学 教養学部
・聖徳大学 心理・福祉学部 心理学科
・京都橘大学 健康科学部 心理学科
・東京福祉大学 心理学部 心理学科

費用

まず、受験資格の前提となる大学・大学院の学費がかかり、別途、公認心理師の受験費用等がかかります。

▼大学・大学院の学費の相場

大学の学費例
(通学)約250~400万円
(通信)約70~100万円
大学院の学費例
(通学)約50~250万円

▼資格・受験に関する費用

初期:(受験手数料)28,700円+登録手数料 7,200
ただし現任者講習(Gルートでの取得の場合)費用は70,000円(テキスト代別)がかかります

現任者講習は、2019年は、1月に申し込み、2~3月に実施(4日間コース)されます。2018年、2019年共に、4月に追加講習が行われました。

維持:なし(ただし変更・再登録手数料6,100円)

就職先

公認心理師の就職先として想定されているのが、以下のような分野です。

保健・医療分野:病院、診療所、精神保健福祉センターなど
社会福祉分野:児童相談所、老人福祉施設、地域包括支援センターなど
教育分野:学校、教育センターなど
産業・労働分野:ハローワーク、労働相談所など
司法・犯罪分野:裁判所、更生保護施設、刑務所、少年院など

カリキュラム

公認心理師のカリキュラム等検討報告書による、カリキュラムの到達目標と、大学等で修めるべき科目は以下の通りです。

到達目標
  1. 公認心理師としての職責の自覚
  2. 問題解決能力と生涯学習
  3. 多職種連携・地域連携
  4. 心理学・臨床心理学の全体像
  5. 心理学における研究
  6. 心理学に関する実験
  7. 知覚及び認知
  8. 学習及び言語
  9. 感情及び人格
  10. 脳・神経の働き
  11. 社会及び集団に関する心理学
  12. 発達
  13. 障害者(児)の心理学
  14. 心理状態の観察及び結果の分析
  15. 心理に関する支援(相談、助言、指導その他の援助)
  16. 健康・医療に関する心理学
  17. 福祉に関する心理学
  18. 教育に関する心理学
  19. 司法・犯罪に関する心理学
  20. 産業・組織に関する心理学
  21. 人体の構造と機能及び疾病
  22. 精神疾患とその治療
  23. 各分野の関係法規
  24. その他
大学における必要な科目
  1. 公認心理師の職責
  2. 心理学概論
  3. 臨床心理学概論
  4. 心理学研究法
  5. 心理学統計法
  6. 心理学実験
  7. 知覚・認知心理学
  8. 学習・言語心理学
  9. 感情・人格心理学
  10. 神経・生理心理学
  11. 社会・集団・家族心理学
  12. 発達心理学
  13. 障害者(児)心理学
  14. 心理的アセスメント
  15. 心理学的支援法
  16. 健康・医療心理学
  17. 福祉心理学
  18. 教育・学校心理学
  19. 司法・犯罪心理学
  20. 産業・組織心理学
  21. 人体の構造と機能及び疾病
  22. 精神疾患とその治療
  23. 関係行政論
  24. 心理演習
  25. 心理実習(80時間以上)
大学院における必要な科目
  1. 保健医療分野に関する理論と支援の展開
  2. 福祉分野に関する理論と支援の展開
  3. 教育分野に関する理論と支援の展開
  4. 司法・犯罪分野に関する理論と支援の展開
  5. 産業・労働分野に関する理論と支援の展開
  6. 心理的アセスメントに関する理論と実践
  7. 心理支援に関する理論と実践
  8. 家族関係・集団・地域社会おける心理支援に関する理論と実践
  9. 心の健康教育に関する理論と実践
  10. 心理実践実習(450時間以上)

資格所有者の満足度

第1回試験に合格し、登録申請をした人のうち、早い人は2019年2月に登録が完了しています。新しい資格のため、満足度はまだ分かりませんが、2019年度の心理職の求人には、応募資格として公認心理師が新たに加えられる場合も多く、期待の大きさがうかがえるものとなっています。

ただし、公認心理師は広い領域で心理職として働くことができる能力を示すものであるため、専門とする領域学会認定資格臨床心理士などの資格も取得しておくことが望ましいと言えるでしょう。

公認心理師のキャリアと将来性

公認心理師は、その成立背景から、国内の心理職におけるもっとも重視される資格になることは間違いないでしょう。

もう一点、重要なポイントは診療報酬です。現在、「臨床心理技術者」が唯一心理職で診療報酬が認められていますが、今後は公認心理師に置き換えられる予定のため、医療機関での就職に必須となる可能性があります。

公認心理師とカウンセリング診療報酬

確定事項ではありませんが、今後すべて診療報酬の範囲は「公認心理師を持っている心理職のみ」になるのではないかという見方もあります。

医療機関では、診療報酬を受け取ることが出来る保険適用のカウンセリングを公認心理師に任せられる為、医師の負担を減らすことができます。

心療内科などでカウンセラーを常勤で雇用する動きが広がることで、患者さんにとってみれば、気軽に安い料金でカウンセリングを受けることができるため、活用される機会が増えていく…という好循環が生まれてくる事が考えられます。